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グライコバイオマーカー・リーディング・イノベーション(株)

■「黎明期の“糖鎖”に賭けるバイオベンチャー」

業種:バイオテクノロジー
グライコバイオマーカー・リーディング・イノベーション(株)

「7年前のこと。その話を聞いて、これはすごい、と心が震えた」と語るのは、グライコバイオマーカー・リーディング・イノベーション」(GL−i、茨城県つくば市)社長の竹生一行さん。気弱になったマウスが生まれた、というのが竹生社長を驚愕させた出来事で、気弱マウス誕生に深く関わるバイオ関連事業に取り組むのがGL−iだ。キーワードは「糖鎖」。竹生社長は「バイオ分野にパラダイムシフトを起こせる」と、糖鎖に基づく同社バイオ事業の広がりを確信している。

同社は産総研(産業技術総合研究所)技術移転ベンチャーとして今年3月に立ち上がった。「糖鎖合成・解析プラットフォーム技術を用いて、糖鎖に関連する臨床検査薬や医薬品などを事業化する」(同社ホームページより)のが目的で、産総研が10年以上にわたって積み重ねてきた研究成果が拠り所となる。糖鎖とは、糖が鎖状に連なった物質で、細胞やたんぱく質の表面に存在する。どのような糖鎖が付いているかで、たんぱく質の働きが決まり、各種の疾患と糖鎖の関係性などの研究が進んでいる。

産総研における糖鎖研究の大きな成果として、疾患の状態により変化する「糖鎖バイオマーカー」を用いた肝線維化検査技術が挙げられる。肝炎から肝硬変、肝がんに至る肝線維化の進行度合いを調べる技術で、大手医療関連機器メーカーと共同開発した。GL−iでは今後、プラットフォーム技術をフル活用し、さまざまな疾患に対応する糖鎖バイオマーカーの研究に力を注いでいく。個別化医療、適確医療(プレシジョン・メディスン)、先制医療といった新たな医療形態が注目されている折、同社では、糖鎖バイオマーカーがそれらの実用化にも大いに寄与するとみている。

竹生社長は、もともと大手化学会社の研究・開発に携わり、縁あって産総研TLO(技術移転機関)や産総研ベンチャー開発部に籍を置いた。7年前の「気弱なマウス」は、1種類の糖鎖の発現を抑えることで生み出されており、以来、糖鎖に強い関心を持ち続け、「コア技術は唯一無二の世界トップ技術。肝線維化に続く第2、第3弾を必ずつくれる」(竹生社長)と見極め、今春、起業した。産総研の糖鎖研究の第一人者をはじめとする研究員および経営や財務に精通した専門家集団を形成、事業化への体制を整えた。

糖鎖関連の研究開発は今、黎明期にあり、その中で日本は先頭を行くと評価されている。ただ、米国や中国が、国策として糖鎖関連の研究に大きな予算を投じ、急ピッチで追い上げている。竹生社長は「バイオの事業は、基本特許が取れる黎明期が勝負。世界的に優位にある糖鎖技術でパラダイムシフトを起こし、技術立国日本の基盤の一つを創造したい」と、熱い思いを披露する。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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