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ハルタゴールド(株)

■「金触媒の研究者の思い、大学発ベンチャーで実現目指す」

業種:金ナノ触媒の研究開発等
ハルタゴールド(株)


著名な研究者の名字と研究対象がそのまま社名になっているベンチャー企業がある。長年、金を触媒として活用する研究に取り組んでいる春田正毅・首都大学東京教授の「ハルタ」と金触媒の「金=ゴールド」を並べたハルタゴールド(東京、柴田徹代表取締役)がその会社。名は体を表す同社が立ち上がったのは、平成25年7月のこと。2年目の今年度、早くも黒字化して、推し進めているブルーオーシャン戦略(競争の少ない未開拓市場の開拓)に確かな手応えを感じているところだ。

同じ貴金属の白金(プラチナ)が、自動車の排ガス浄化や燃料電池などの触媒として広く使われているのに対して、金は長い間、触媒としては効かないと
いうのが世界の定説となっていた。1980年代初め、春田教授が金のナノ粒子(直径が数ナノメートル=ナノは10億分の1=の微細粒子)に触媒作用があることを発見し、定説を覆す。以来、20有余年、世界各国で金ナノ粒子触媒の研究開発が盛んに行われ、白金など既存触媒と比べた優位点が示されるなどで、事業化も徐々に図られて今日に至る。

もっとも、まだまだ市場規模は小さく、未知、未開の領域と捉えられる金ナノ粒子触媒の事業化を加速させ、新たな利用分野を見いだそうとの狙いで誕したのがハルタゴールドだ。ITエンジニアや経営コンサルタントとして活躍し、首都大学東京の産学連携業務に携わっていた柴田氏が代表取締役兼CEO(最高経営責任者)に、春田教授が取締役兼COO(最高執行責任者)に就き、他の役員も大学教員が占める大学発ベンチャーとして船出した。

「大学の教職とベンチャー企業経営の兼業を認めてもらい、設備は大学とレンタル契約を結んで低コスト化を図った」(柴田氏)。こうして、大学側の手厚いサポートを引き出してスタートした同社が、今、取り組んでいるのは、参照触媒サンプル(触媒特性や微細構造に関する情報などを添付した試薬)の製造・販売。同サンプルは金ナノ触媒の基礎研究と産業化の間の橋渡し役を果たすもの。春田教授は「ハルタゴールドが起爆剤となり、金ナノ触媒を普及させる」と意気込む。

同社では今後、「特注品の開発や、メンテナンスを含めたハンドリングなどにも取り組みたい」(柴田氏)と業容拡大を図って、金ナノ触媒全体の成長発展と自社の躍進がシンクロするような形態を目指していく。昨秋、ノーベル物理学賞に輝いた青色LEDと金ナノ触媒には「日本人が定説を覆し、不可能とされていた研究開発を実現させた」との共通点がある。ハルタゴールドがブルーオーシャンの大航海を果たした先には、アルフレッド・ノーベルをかたどった金メダルが待っているかもしれない。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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