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元気な企業(最新)

2006年の記事

 

 

 

 

 

(株)協同

 

■危機を賢明に乗り切った中堅企業

業種:化成品事業
(株)協同

企業というものは生きものだ。きっかけ次第で思わぬ事業転換が進むものだ。第二創業論があるが、選択と集中による新創業を見るようでもある。(株)協同(東京都北区、中島京子社長)の歩みがそれだ。リーダーが病いで療養生活を迫られ、後継者にバトンタッチを行った際、後継者がやりやすい仕事をということで、従来主力だった金属加工事業から化成品事業に軸足を移した。それが功を奏し、水を注ぐだけで発熱する簡易発熱剤をヒットさせたこともあって、見事柔らかな変身を遂げた。

1998年、それまで同社をリードしてきた守屋勇治社長が病気療養のため、会長となり、社長を、現社長の中島氏に譲り、共同代表制をとった。この際、守屋会長は「従来、主力としてきた金属加工の仕事は外注先に任せ、後継者がやりやすい仕事を」と、化成品分野に注力する事業転換を促した。これまで手がけてきた事業の内、化成品事業に絞って残したのだ。思わぬきっかけによる選択と集中が進んだのである。

以後、中島社長は化成品事業の発展に力を注ぐ。化粧品、せっけんなどさまざまな商品を出した。なかでも、阪神大震災の被災者対策にヒントを得て生み出した簡易発熱・加熱剤「モーリアンヒートパック」のヒットは大きな効果を生んだ。同剤は水を注ぐだけで簡易加熱剤が反応し、約90度Cの温度を15分間維持できるというすぐれもの。アルミの粉末と生石灰を混ぜたものに、少量の水を注ぐと水和反応を起こし発熱する仕組み。開発に長い時間を要した。「人体に害を与えない物質の中で何をアルミニウムの起爆剤にするかで、試行錯誤を繰り返したと中島社長は語る。その結果、従来の発熱方式に比べ、10分の1の生石灰で温めることのできる方式の開発にこぎつけた。当初は災害時を念頭に用途を考えていたが、いまや、市場は広がり、料亭や外食産業にも顧客が広がった。ヒートパックのノウハウを生かし、暖かな釜飯弁当をつくりたいという顧客が現れたかと思えば、足湯や痔の薬に応用したいという向きも現れるなど市場はグンと広がってきている。防衛庁への納入も増加、2008年には440万個を見込むまでになった。使用後、土壌の改良やセメントの再利用にも役立つ点も需要を膨らませている。

化成品に重点指向し、研究開発に力を入れる同社、リーダーのアンラッキーを逆にプラスに転化、見事に事業転換を軌道に乗せた。危機に際し、どう対処するか、日ごろ、リスクマネジメント力を蓄えているか否かが、企業の存否を左右することを教えられる。



著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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