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2013年の記事

 

 

 

(株)企業農業研究所

■「幸せな牛からおいしい牛乳」

業種:乳製品の生産販売
(株)企業農業研究所


岩手県の山間地で牛を通年昼夜、放牧する山地(やまち)酪農という方式により牛乳や乳製品を生産し、独自ブランドで販売しているのが(株)企業農業研究所(岩手県岩泉町)。「幸せな牛からおいしい牛乳を」との酪農家の思いが、こだわりの牛乳、乳製品を求める消費者に伝わって、「中洞(なかほら)牧場」ブランドが今、ブレーク寸前になっている。

同社は3年半ほど前、IT系企業の(株)リンク(東京都港区)の岡田元治社長が興し、自ら社長に就いた。リンクのネット通販事業を通じて、岩手県の中洞牧場を知り、牧場の中洞正さんと岡田社長が意気投合したことから企業農業研究所が生まれた。中洞さんは30年ほど前から、野シバ飼育、無農薬、完全自然放牧の山地酪農に取り組んできた。新会社発足により、山地酪農のステップアップに向け再スタートを切ったところだ。

岡田社長が畑違いの酪農に参入したのは、中洞さんの酪農家としての思いに共鳴したほか、IT企業経営者としての狙いがあった。リンクではIT企業としては珍しい全社員正規雇用や、年金の支給開始年齢まで雇用を保証する変動定年制を早くから導入していた。しかし、変化が速いIT最前線で高齢になっても働くのはきつい面がある。そこで「高齢者がいつまでも働ける仕事はないものかとずっと探していて、酪農に行き当たり、これだと思った」(岡田社長)。

中洞牧場の牛乳は4合ビン(720ミリリットル)で945円と、スーパーやコンビニで売っている1リットル200円余りと比べ、かなり割高になる。山地酪農では搾乳量に限界があることなどから、高価格にせざるをえないのだ。それでも、コクがあってさわやか、出回っている牛乳とは一味も二味も違う中洞牛乳は、ネット通販や大手百貨店の催事コーナーなどを通じて着実にファンを増やしてきている。

岡田社長は、「奇跡のリンゴ」で有名なリンゴ農家の木村秋則さんと、カキ養殖家として知られる畠山重篤さん、それに中洞さんの3人のトークイベント「森・土・海は食のゆりかご、命のゆりかご」を東京で開催するなど、農業や水産業のあるべき姿を世に問う取り組みも進めている。そうした活動を通して「ストレスのない健康な牛から搾乳する山地酪農への理解は明らかに高まっている」(同)と手応えを実感する。中洞牧場ブランドが、ひときわ輝く日まで、そう遠くない。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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