東京総研トップへ

元気な企業(最新)

2009年の記事

 

 

 

田川産業

 

漆喰セラミックで伝統産業を進化

業種:漆喰セラミック製造販売
田川産業

地域資源をとことん活用して伝統産業を守り、これを発展させる→地元を中心とした複数の大学との産学官連携を深める→政府主催の中小もの作り関連の賞を獲得して世の中に広く社名を知らせる→信用と評価を背景に公的補助金を活用する―資金力の弱い中小企業がこれらをまとめて実行できれば、まさに言うことなし、理想に近い経営だ。これを夢とせず一つ残らずやり遂げ、元気いっぱいに成長している中小企業がある。

産炭地としてわが国の近代化を支えた福岡県田川市。そこに拠点を置く田川産業(行平信義社長)がそれだ。田川市は石灰石の産地としても知られる。石炭の国内生産は終わってしまったが、石灰石の方は今でも健在だ。わが国でただ一つ、自給できる鉱物が石灰石。大自然の生命サイクルの中から生み出されたカルシウムの凝縮体である。この大切な地域資源を企業の成長に活用してきたのが同社。漆喰のトップメーカーである。

漆喰は日本の伝統産業の一つだが、昔は左官が材料を集めて建築現場で調合する面倒な作業が伴っていた。同社はこれをあらかじめ工場で調合し、現場の手間を省いて品質を安定させるという「既調合漆喰」を主力製品に育て上げた。特筆ものと言えば、漆喰の成分を代理石並みの強度を持つ不焼成タイルに変身させた漆喰セラミック「ライミックス」(商品名)を、長年の研究の末に開発したことだ。

ライミックス誕生の「秘話」はこうだ。漆喰ボードの開発を手掛けた10年以上も前、壁に突き当たったとき、知り合いの技術者の「圧力をかけて固めたら」という言葉にヒントを得て、行平社長は「ダメもとでやってみた」。すると漆喰が大理石のような質感のタイルに変身したという。「驚き、しかも面白い」と直感し、試作用のプレス機を導入し本格的な開発に乗り出した。これが2007年度「ものづくり日本大賞内閣総理大臣賞」につながったのである。

量産に当たっては、福岡大学などとの産学連携のほか経営革新法の認定、日本政策金融公庫の特別融資枠などを活用。グッドデザイン賞特別賞を2年連続受賞したほか、「元気なモノ作り中小企業300社」にも選ばれた。昨今、エコ、健康志向の流れで、天然素材でしかも調湿機能が高い漆喰に再び光が当たってきたことも追い風。建築現場に漆喰という新風があちこちに吹き渡る日も遠いことではなさそうだ。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


著作者の承諾を得て掲載しています。無断転載ご遠慮願います。

 

▲ TOP

2009年の記事に戻る