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2014年の記事

 

 

 

(株)tree

■"感動"が処方箋の認知症療法を事業化

業種:認知症の演劇情動療法
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65歳以上で15%、85歳以上では40%超の人が罹患している(厚労省の2013年調査より)といわれる認知症。誰もが、家族や親戚に、ひとりやふたりは認知症患者を抱える時代を迎え、しかも、この先、高齢化の一層の進展から、患者数は間違いなく増え続けていく。「認知症とどう向き合うか」が、まさに国民的課題となっている。そんな中、情動=感情の動きをキーワードにして、認知症と"格闘"している企業が東北にある。

認知症患者に対して「演劇情動療法」なるものを施すtree(山形県米沢市、金田江里子代表取締役)がその会社。同療法では、プロの役者が老人ホームなどを訪問して、感動的な物語を朗読したり、ショートストーリーを演じたりする。朗読、劇がツボにはまると「普段は無反応な認知症患者が、涙を流したりもする」(金田代表取締役)。そうした情動への働きかけにより、患者のストレスや不安を解消し、ひいては認知症の改善につなげようとの試みである。

同社は個人事業で広告デザインなどに取り組んでいた金田さんが、話すことに障害がある人たちの意思伝達を支援するコミュニケーション絵本を商品化した平成22年に法人化した。広告デザインと併せて福祉関連分野に力を入れる中で「情動療法」に遭遇した。同療法は佐々木英忠東北大医学部名誉教授、藤井昌彦東北大教授らの研究に基づくもので、その研究では、認知機能(IQ)と情動機能(EQ)のうち「IQが低下し認知症になっても、EQが保たれていれば社会生活は円滑に送れる。EQに良い刺激を繰り返すことで、EQ低下を予防でき、場合によってはIQの改善も図れる」と成果をまとめている。

金田代表取締役は「薬物を用いずに、感動が処方箋となる情動療法は、新たなビジネスを形成する」と考えて、現在、情動療法研究会を立ち上げ中。医療・福祉、レクリエーション、セミナー、出版・印刷、飲食、演劇など幅広い分野の関係者に参加を呼び掛けている。認知症患者を抱える家族に対するケアも重要な課題と捉え、草の根運動的な情動療法プロジェクトを推進しようとしている。

意思伝達支援のコミュニケーション絵本は、金田代表取締役の叔父が舌癌を患い会話が難しくなったことがきっかけとなり開発した。今回の演劇情動療法への取り組みは、「親が認知症で、バリバリの介護家族」(金田代表取締役)であるのが原動力の一つとなっている。身近な問題から発想し、その問題解決策を事業化に結びつける金田代表取締役には、女性特有の細やかな感性と、シャープな時代感覚が備わっている。地方都市で活躍する女性起業家&社会起業家のロールモデルとなる人だ。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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