無断欠勤と懲戒解雇 (2003年2月号より抜粋)  
     
 

無断欠勤2週間なら即時に懲戒解雇しても権利濫用にならないでしょうか

 

Q

先日、中途採用した社員が、この1週間ほど無断欠勤し、連絡が取れません。会社の就業規則には、「無断欠勤が14日間に及んだとき」を懲戒解雇事由のひとつとして定めています。仮に欠勤日数がこの基準に達したら、懲戒解雇処分をしても差し支えないでしょうか。

 

 

A

解雇事由を法制化しようという論議が、活発化しています。現在の労働基準法にはどのような理由に基づく解雇が有効なのか、明文の規定が存在しないのです。しかし、行政官庁の見解がまったく示されていないわけではありません。

下線部注

労働基準法第20条は、解雇30日前の予告、または30日分の賃金支払(解雇予告手当)の支払いを義務付けていますが、「労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合」には、労働基準監督署に申請することで、解雇予告の除外認定を受けられると定めています。

除外認定の基準は通達(昭和23・11・11基発1637号)で示されているので、主要部分を抜粋します。「労働者の責めに帰すべき事由として認定すべき事例を挙げれば、

(イ)原則として極めて軽微なものを除き、事業場内における盗取横領、障害等の刑法犯に該当する行為のあった場合

(ロ)賭博、風紀素乱等により職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ぼす場合

(ハ)雇入れの際の採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合

(ニ)他の事業へ転職した場合

(ホ)原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合

(ヘ)出勤不良又は出欠常ならず、数回にわたって注意を受けても改めない場合

の如くであるが、必ずしも上の個々の例示に拘泥することなく、総合的かっ実質的に判断すること」

最後の注意書きにあるように、例示事項以外でも、業務命令不服従、人事発令拒否、会社の誹謗中傷など、裁判で認められた解雇事由は、他にもあります。

しかし、明文で示された例示事項は、いわば官庁お墨付きの懲戒解雇事由とみなせます。貴社の就業規則は古いもので、制定当時の経緯を知る人はいないかもしれませんが、.恐らく、この通達を念頭に置いて作成されたものと思われます。「無断欠勤7日間で懲戒解雇」などという就業規則は認められないでしょうが、貴社の規定は有効です。ただし、欠勤が14日間(通達では2週間)に及べば、機械的に処理できるわけではありません。「出勤の督促にも関わらず」出勤しないという状況が必要です。

日頃の言動から推して無断欠勤しそうにない人が、2週間にわたって居所不明のときは、懲戒解雇を検討する以前に何らかの事故の発生を想定して行動すべきです。

出勤不良社員に限って、規定の適用が可能と考えるべきでしょう。

出勤状態が悪い不良社員をトラブルなく解雇できる就業規則はこちら


下線部注:これは記事原文が書かれた2003年の状況です。2004年1月に労働基準法が改正施行されました。第18条の2として解雇ルールが明文化されました。

(解雇)第18条の2 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

さらにその後、解雇権濫用法理は、平成19年公布の労働契約法第16条に「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」とそのままの形で移行し、労働基準法からは抹消されました。

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