勤続年数が短い社員の高年齢雇用継続給付 (2006年3月号より抜粋)  
     
 

勤続年数が短い従業員でも高年齢雇用継続給付の対象になるのか?

 

Q

高年齢者を再雇用する場合、雇用保険の高年齢者雇用継続給付は心強い味方です。数年前に50歳台後半で採用した従業員が、近く60歳定年を迎えます。雇用年数が短い従業員の場合、雇用継続給付はどのような扱いになるのでしょうか。

 

 
 

A

被保険者期間が5年になった時に支給対象になる

60歳代前半の従業員を嘱託再雇用する場合、賃金が大幅にダウンするのが一般的です。雇用保険では、定年前に比べ賃金が75%未満に低下した場合、収入を補填する仕組みを設けています。原則的には、60歳到達日を離職日とみなし、計算した基本手当の賃金日額をベースに「60歳到達時賃金」を算出します。

再雇用後の賃金が、この60歳到達時賃金の61%未満になったときは賃金の15%、61%以上75%未満のときは「15%から一定の割合で逓減するように定めた率」を乗じて、雇用継続給付の額を計算します。

対象になるのは、「被保険者であった期間」が5年以上ある雇用保険の被保険者です。「被保険者であった期間」とば、被保険者として雇用されていたすべての期間をいい、私傷病や育休等による休業期間を含みます。

5年に満たないときは、その時点では高年齢者雇用継続給付を受けることはできません。嘱託再雇用等により「被保険者であった期間」が上乗せされ、トータル5年になれば、受給資格が生じます。

ただし、注意が必要なのは、継続給付の算定方法です。原則的には、60歳到達時賃金と再雇用後の賃金を比較しますが、60歳を過ぎて受給資格を得た場合、その時点の賃金が継続給付算定のベースになります。

60歳到達時に比べれば大幅に賃金がダウンしていても、受給資格を得た時点の賃金と、それ以降の賃金水準に差がなければ、継続給付の支給対象になりません。つまり、「被保険者であった期間」が5年に達しても、結局、継続給付を受けられないというケースも生じるわけです。

 

雇用保険法 第61条(高年齢雇用継続基本給付金)

高年齢雇用継続基本給付金は、被保険者(短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を除く。以下この款において同じ。)に対して支給対象月(当該被保険者が第1号に該当しなくなつたときは、同号に該当しなくなつた日の属する支給対象月以後の支給対象月)に支払われた賃金の額(支給対象月において非行、疾病その他の厚生労働省令で定める理由により支払を受けることができなかつた賃金がある場合には、その支払を受けたものとみなして算定した賃金の額。以下この項、第4項及び第5項各号(次条第3項において準用する場合を含む。)並びに同条第1項において同じ。)が、当該被保険者を受給資格者と、当該被保険者が60歳に達した日(当該被保険者が第1号に該当しなくなつたときは、同号に該当しなくなつた日)を受給資格に係る離職の日とみなして第17条(第3項を除く。)の規定を適用した場合に算定されることとなる賃金日額に相当する額(以下この条において「みなし賃金日額」という。)に30を乗じて得た額の100分の75に相当する額を下るに至つた場合に、当該支給対象月について支給する。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。

  1. 当該被保険者を受給資格者と、当該被保険者が60歳に達した日又は当該支給対象月においてその日に応当する日(その日に応当する日がない月においては、その月の末日。)を第20条第1項第1号に規定する基準日とみなして第22条第3項及び第4項の規定を適用した場合に算定されることとなる期間に相当する期間が、5年に満たないとき。
  2. 当該支給対象月に支払われた賃金の額が、350,880円(その額が第7項の規定により変更されたときは、その変更された額。以下この款において「支給限度額」という。)以上であるとき。

(以下略)

 

 

 
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