コアタイムに遅刻した時間の処理 (2006年7月号より抜粋)  
     
 

フレックス制社員が電車事故に遭遇した場合に何時出勤とみなすべきか?

 

Q

当社ではフレックス制を採用し、10時から3時までをコアタイムと定めています。8時から働くつもりで、朝早く家を出た社員が、電車の事故に遭遇し、結局、会社に着いたのは10時半でした。この場合、コアタイムの10時出勤として扱うべきでしょうかこそれとも、30分の賃金カットが可能ですか。

 

 
 
 

10時30分出勤として取り扱い、賃金カットは清算期間の所定労働時間を満たしているかによって行う。

電車の事故など、不可抗力の理由で遅刻した場合、遅延証明書等を出せば、賃金カットしないという会社が少なくありません。規定はなくても、実務的にはそういう処理がなされているケースが多いようです。常識的に考えれば、誰しも納得のいく方法だといえるでしょう。

一般社員だと、朝の出勤時間(始業時間)は固定ですから、問題はありません。しかし、フレックスタイム制の場合、始業時刻の決定は従業員本人の意思にゆだねられています、8時出勤のつもりで家を出たのだけれど、10時半についたという場合、どう処理するのが正しいのでしょうか。「賃金処理上」の出勤時間としては、8時(本人が意図した時間)、10時(コアタイムの始業時間)、10時半(実際の出勤時間)の3とおりが考えられるでしょう。

そもそも、法律論としては、会社は遅刻相当時間を賃金カットしても差し支えありません。民法では、さまざまな理由で契約履行ができなかった場合、債権者・債務者どちらが危険を負担するかについて、細かな規定を置いています

。しかし、原則は、民法第536条により「危険負担における債務者主義」が採られています。同条第1項では、「当事者双方の責めに帰すことのできない」理由で債務不履行が生じたときは、債務者が危険を負担すると定めています。民法の教科書をみると、「劇団が交通機関のストによる交通杜絶のため劇場に出演できない場合、出演料の支払いを求めえない」などと説明されています。労働契約についても、考え方は同じです。

ですから、法律的にいえば、10時半出勤として処理するのが正解という結論になります。

賃金カットに関しては、フレックスタイム制の場合、遅刻・早退による賃金カットという概念がありません。一清算期間の所定労働時間を満たしていれば賃金はカットされないからです。(それ以上働いていれば割増賃金の対象となります。)

たとえ労働者がコアタイムに「遅刻」しても、そのあと遅刻分を取り返すように働いて、一清算期間の所定労働時間を満たせば、会社は賃金はカットできません。

皆が職場にいて働いているべきコアタイムの「遅刻」が横行すれば、職場の規律が保てませんし、取引先との関係でマズイことになる場合も考えられます。

ですから、コアタイムの「遅刻」に関しては、下記のようなペナルティーを科して会社の秩序の維持をはかってみてはいががでしょうか。

  1. 就業規則に、コアタイムの「遅刻」何回に対して減給などの制裁を加えるよう記述して、抑止力とする。

  2. コアタイムの「遅刻」をボーナスが査定に反映するよう賃金規程に明記

  3. コアタイムの「遅刻」を昇進・昇格に関する人事考課の材料とする

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