パソコンの中の出退勤記録の保存期間の義務(2007年1月号より抜粋)  
     
 

パソコン上の始・終業時刻のデータは賃金台帳記入後は消去可能ですか?

 

Q

毎日の始業・終業時刻を、本人がパソコンに打刻し、総務が一括管理するシステムを立ち上げることにしました。コンピュータ上のデータは、一定期間後に消去して構わないのでしょうか。記録を紙に印字し、保存しておくべきでしょうか。

 

 
 
 

3年間の保存義務がある

本人がパソコンで打ち込んだデータを基に、会社は労働時間数を集計し、賃金を計算します。労働時間数と賃金の額は、賃金台帳に記載します。賃金台帳への記載は、労基法第108条に基づく強制義務です。

それでは、賃金台帳にデータが転記された後、元データは用済みとなり、自由に廃棄可能なのでしょうか。

この問題について、「労働時間適正把握基準(平13・4・6基発第339号)」では、次のような解釈を示しています。「始業・終業時刻など労働時間の記録に関する書類も労基法第109条にいう『その他労働関係に関する重要な書類」に該当する。労働時間に関する書類としては、使用者が自ら始業・終業時刻を記録したもの、タイムカード等の記録、残業命令書およびその報告書並びに労働者が自ら労働時間を記録した報告書などがある」。

本人打刻の始業・終業時刻データは、「労働者が自ら労働時間を記録した報告書」の1バリエーションですから、「その他労働関係に関する重要な書類」に該当します。

労基法第109条では、「労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならない」と定めています。ですから、賃金台帳にデータを転記した後も、3年間は元データを保管する必要があります。

保存する方法については、行政解釈(平8・6・27基発第411号)が出されています。「その他労働関係に関する重要な書類」等については、次の条件を満たす場合に、労基法第109条で定める「保存」の要件を満たすと解されています。

  1. 画像情報の安全性が確保されている

    1. 故意・過失による消去、書き換えができない

    2. 保存義務のある書類とない書類を区別できる

  2. 画像情報を正確に記録し、かつ、長期間にわたって復元できる

    1. 画像情報を正確に記録できる

    2. 3年間損なわれることなく保存できる

    3. 画像情報を正確に復元でき、また、監督官の臨検等に際し、直ちに写しを提出し得るシステムとなっている

これら要件を満たす形で記録が保存されている場合には、紙に印字して、別に保管する必要はありません。3年間は、「書類毎に最後の記載がなされた日」(前掲平13・4・6基発第339号)から起算します。

法令で定める最低基準に留意しつつ、適正な社内ルールを定める必要があります。

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