人材派遣と残業 (2007年5月号より抜粋)  
     
 

派遣先が36協定未締結で時間外労働命じたら法違反の責任は誰が負う?

 

Q

派遣労働者に残業を命じる場合、派遣先(当社)ではなく、派遣元(派遣会社)で36協定締結が必要だと聞きました。派遣会社に問い合わせたところ、未締結という回答を得ましたが、こうしたケースでは、罰則の適用を受けるのは派遣会社で、当社は関係ないという理解で正しいのでしょうか。

 

 
 
 

ユーザー会社に罰則を適用

派遣労働者は、派遣会社(派遣元)と雇用契約を結びます。貴社は指揮命令権を行使するだけで、派遣社員は貴社の社員ではありません。ですから、労働基準法も原則的には派遣会社を対象として適用されます。

しかし、現実の労務先は派遣先(ユーザー会社である貴社)ですから、労働時間管理や安全衛生管理の一部等については、派遣先を事業主とみなす特例が設けられています。派遣法第44条第2項では、「労働基準法第32条、第36条第1項等については、派遣先の事業のみを事業主とみなす」と規定しています。

労基法第36条第1項を適用するに当たっては、「派遣元の使用者が、当該派遣元の事業場に過半数労組がある場合にはその労働組合、ない場合には過半数代表者と書面による協定をし、及びこれを行政官庁に届け出た場合には、(法定の限度を超え)労働時間を延長できる」と読み替えます。

派遣労働者に時間外労働を命じる場合、派遣元で36協定が必要となるのは、この読み替え規定によるものです。36協定の当事者は、派遣元の使用者と派遣元事業場の遇半数労組(ないときは過半数代表者)です。貴社としては、締結を怠っていたのは派遣元なのだから、労基法違反を追求されるのも派遣元だとおっしゃりたいようです。

しかし、36協定を必ず締結する義務はありません。結んだ場合に、法定労働時間を超えて労働させても、免責的効力を生じるだけです。最初から時間外労働を命じるつもりがないのなら、36協定も必要ないのです。

36協定の締結により免責を受けるのは、前述の派遣法第44条第2項により事業主とみなされた貴社となります。逆にいえば、36協定がないのに時間外労働をさせた場合、責任を負うのも貴社となります。「労働基準法第36条違反の罰則は何ですか」、時々そういう質問を受けますが、直接の罰則は存在しません。労基法第36条ただし書きに違反し、「健康上特に有害な業務」の従事者に対し1日2時間以上時間外労働をさせた場合に限って、6月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。

しかし、適法な36協定がないのに時間外労働をさせた場合には、免責的効力がない結果として、1週40時間、1日8時間の原則を定めた労基法第32条違反となります(最初は指導で済むでしょうが)。罰則(6月以下の懲役または30万円以下の罰金)の対象となる使用者は、やはり特例により事業主とみなされる貴社です。

 

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