女性の在職老齢年金が思ったより少ない (2007年6月号より抜粋)  
     
 

60歳で再雇用した女性の在職老齢年金が予想外に低額なのはなぜ?

 

Q

女性が60歳に達した後、再雇用したのですが、初めてのケースで戸惑っています。第1回の年金を受け取った女性が、「思ったより、ずっと少ない」といっています。在職老齢年金だから、当然、満額より少ないと思うのですが、そのほかに何か考えられる理由がありますか。高年齢者雇用継続給付金ももらっています。

 

 
 
 

支給年齢引き上げの第一世代だから

女性だから、男性と計算式等が違うわけではありません。男性にとっても参考になるので、基本的な点から、確認しましょう。

今年60歳に達したのですから、昭和22年生まれのはずです。男性については、だいぶ以前から、「支給開始年齢の引き上げ」により、60歳定年に達しても、すぐに満額の年金をもらえない(報酬比例+定額部分のうち、定額部分は支給停止)ことは、常識になっています。

女性については、引き上げスケジュールが5年遅れとなっているので、今でも満額もらえると思っている人がいるかもしれません。しかし、昭和21年4月2日から昭和23年4月1日の間に生まれた人は、既に引き上げの対象になっていて、満額支給は61歳からです。これが、「年金が少ない」と感じる第一の理由かもしれません。

次に、在職老齢年金は、総報酬月額相当額(標準報酬月額+過去1年の標準賞与額の12分の1)と年金の基本月額をべースに計算します。再雇用後の賃金が低くても、定年前1年間に高い賞与をもらっていれば、どうしても総報酬月額相当額は高くなってしまいます。すると、在職老齢年金も減ってしまうわけです。

嘱託として1年間フルに賞与をもらって(定年前の賞与の影響がなくなって)初めて、「本人が考えるレベル」の在職老齢年金が払われるようになります。これが、第二の理由です。

最後に、高年齢雇用継続給付との調整もきちんと理解する必要があります。再雇用後の賃金が、60歳到達時等の賃金と比べ、75%未満に低下したときは、雇用保険から高年齢雇用継続給付が支給されます。

金額については、再雇用後の賃金水準が61%未満のときは、再雇用後の賃金の15%相当となります。61%以上75%未満のときは、再雇用後の賃金に15%から一定割合で逓減した率」を乗じた額となります。

話を単純化するために、15%相当の給付金が支給されているとしましょう。このとき、在職老齢年金については、標準報酬月額の6%相当が支給停止となります。よく勘違いされる方がいますが、在職老齢年金の6%カットではありません。

現在、お尋ねにある女性再雇用者の在職老齢年金は、高年齢者雇用継続給付との調整前でもかなり低い水準にあるでしょう。しかし、そこから「標準報酬月額」の6%が丸々引かれてしまいます。ですから、年金が「思ったより少ない」結果となるのです。

 

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