昼休みに労働した場合の処理 (2007年11月号より抜粋)  
     
 

昼休みに時間外労働に従事したと申告があったが割増賃金は必要ですか?

 

Q

当社では、正午から45分間の昼休みを設けています。就業後、資格スクールに通っている社員がいますが、先日、月10時間を超える時間外請求があり、びっくりしました。本人いわく、「時間内に仕事をこなすため、昼休みに仕事していた」ということですが、割増の支払が必要でしょうか。

 

 
 
A

休憩時間を確保する義務あり 残業をするように指示を

会社としては、定時出勤・定時退社していた社員から残業請求されれば、驚くのが当然でしょう。時間外労働は、基本的には使用者の指示を受けて行うものです。使用者の明示・黙示の指示がなく、労働者が勝手に残業を実施したとき、残業代を払う義務はありません。しかし、仕事量からいって、当然、残業しなければ完了できない場合、黙示の指示があったとみなされます。

お尋ねのケースでは、毎日、昼間に働いている姿を同僚等が目撃しているのではないでしょうか。

実際に労務の提供があったのなら、時間外割増の支払が必要になります。昼休み当番に関して、「来客当番として労働に従事する時間が他の労働時問と通算し、1日8時間又は週の法定労働時問を超える場合においては法律上割増賃金の支払い義務が生ずる」(昭23・4・7基収第1196号)という解釈例規が存在します。

しかし、割増賃金を支払ってしまえば、それで問題がすべてクリアされるわけではありません。前掲の行政解釈では、「来客当番により休憩が与えられなかった場合には、別途休憩を与えることを要する」と述べています。

労働基準法第34条では、「労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」と定めています。

始業・終業時問の間にすべての業務を終えるため、昼休みを取らずに働き、第34条の要件を満たさなければ、法違反となります。割増賃金を払ったからといって、休憩の付与義務は消減しないのです。

ですから、貴社の場合、少なくとも45分の休憩時間が確保されるよう、会社は昼休み中の就業を明確に禁じる必要があります。この場合、会社の黙示による指示はないと解されます。

従業員としては、終業時刻までに仕事を終わらせないと、資格スクールに間に合わないので、強硬に反対するかもしれません。この問題は、時間外・休日労働義務に関する判例(日立製作所事件、最判平3・11・28)を参考にすべきでしょう。基本的には、労働協約・就業規則で業務上の必要があるときは時間外労働を命じることができると明確に定めていれば、命令に従う義務が生じます。

ただし、労働者側にやむを得ぬ事由があるときは、命令が権利濫用に当たると判断されるケースもあります。通学期間が短く、限定されているなら、労働者側の事情に合わせ、業務負担を軽減する等の配慮も必要でしょう。

 

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