判例 店長は管理監督者には含まれず (2008年7月号より抜粋)  
   

 

 
 

割増賃金支払いが必要 時間決定の裁量権なし

「店長は、管理監督者に該当しない」と判示した日本M社事件は、いわゆる「名ばかり管理職」の問題に改めて世間の注目を向けさせる契機となりました。下位の役付者にも割増賃金を支払う義務があるとなれば、企業の人件量負担は大幅にアップします。裁判所は、何を根拠として今回の判断を下したのかポイントを探ってみましょう。

日本M社事件 東京地方裁判所(平20.1.28判決)


日本M社事件の衝撃を、数字で示してみましょう。同社の人員構成は、「店長より上位の社員が合計277人、店長が1,715人、それ以外の社員2,555人、アルバイト12万1,022人」でした。店長が管理監督者に該当しないとなると、これだけの大所帯で労基法上の管理監督者は277人しかいない計算になります。アルバイトを除外し、正社員のみを対象とすると、全体のわずか6%を占めるだけです。

労働基準法上の管理監督者というためには、「経営者との一体的な立場において、所定労働時間等の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を付与され、賃金等の待遇やその勤務態様において他の一般労働者に比べて優遇措置がとられている」という条件を満たす必要があります。

店長といえば、小なりといえど「一国一域の主」で、その店舗内の最高権限者です。会社は、当然、管理監督者に該当するという認識を持っていました。

しかし、裁判所は、前記の管理監督者の定義に照らし、必要な要件をクリアしていないと判断しました。

  1. 店長は、アルバイトの採用権限があり、考課・昇給の決定権も与えられていました。しかし、正社員の採用権限はなく、人事考課も一次評価にタッチするのみでした。

  2. 店長は全国レベルの会議に参加しますが、会社から全体の営業方針・戦略等の情報提供が行われるもので、店長がその方針等に関与するものではありませんでした。

  3. 店長は、形式上、自らのスケジュールを決める権限を有していましたが、シフトマネージャー不在の時間帯には、自らその業務を代替する必要があり、労働時間に関する自由裁量性がありませんでした。

  4. 店長とその直近下位のファーストアシスタントマネージャーを比較すると、その差はわずかで十分な賃金優遇がなされていたとはいえませんでした。

本判決でいえば、特に3.が重要で、小店舗という特性上、プレイイングマネージャーとして店舗に張り付かざるを得ない状況にあった点が、実質的に「朝から深夜まで」の労働を義務付けられていたという判断を補強する論拠となっています。一般企業の課長はここまで過酷ではありませんが、1.2.4.の点については、店長とそれほどかけ離れた実態にあるとは思えず、グレーゾーンに位置するケースが少なくないでしょう。

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