派遣切りの責任の所在 (2009年3月号より抜粋)  
     
 

「派遣切り」はどんな法律に違反し誰が責任を負うのでしょうか?

 

Q

世間では、製造業の「派遣切り」が大問題になっています。当社は、サービス業ですが、昨今の業績低迷で、派遣社員の受入を減らしたいと考えています。「派遣切り」は労働契約法違反だと聞いたことがありますが、どういうことなのでしょうか。

 

 
 
A

派遣元が労働契約法違反に

厚生労働省では、「労働者派遣契約の中途解除等への対応について」(平20.12.10基発第1210009号)という通達を発し、指導の徹底を図っています。啓発用のパンフレット等でも、労働契約法違反の問題に触れています。

しかし、労働契約法で「派遣切り」を、直接、規制しているわけではありません。同法第17条は、有期契約労働者の解雇について規定したものです。派遣労働者も期間契約で働けば、当然、有期契約労働者として保護対象に含まれるという意味です。

第17条第1項では、「使用者は、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期問が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」と定めています。

派遣元(人材ビジネス会社)が派遣社員と雇用関係を解消する場合、雇止めと期間途中の解雇という二通りの選択肢があります。製造派遣の分野では、このうち期間途中の解雇が増えています。なぜかというと、派遣先であるメーカーが経済情勢の急激な悪化を受け、突然、派遣契約の打切りを通告してくるからです。経済的余力の乏しい人材ビジネス会社は、受入先のない派遣社員に給料を払い続けることができないので、解雇するしか手がありません。

しかし、労働契約法では、「期問途中の解雇」に厳しい制限を課しています。「やむを得ない事由がある」と事業主が証明できる場合に限って、解雇が可能になります。「やむを得ない事由とは、期間の定めのない労働契約につき解雇権濫用法理を適用する場合における解雇の合理的理由より限定された理由であって、典型的には労働者が就労不能となったことや重大な非違行為があったことなどが該当する」(「詳説労働契約法」荒木尚志ほか)と解説されています。倒産必至ならまだしも、「経営が苦しくなった」というレベルでは、「やむを得ない事由」とは認められないでしょう。

解雇が労働契約法違反と疑われる場合、労働者は裁判のほか、たとえば個別紛争解決促進法に基づく都道府県労働局へのあっせん申請等の方法を用いて、使用者と争うことができます。

しかし、トラブルの当事者となるのは、あくまで派遣元(人材ビジネス会社)で、派遣先である貴社は直接関係がありません。

派遣契約の解除は企業間の民事契約で、行政は不介入の立場を採ります。ただし、派遣先は、「派遣先指針」(平11・労働省告示第138号)に基づき、少なくとも30日前に予告するなど、損害賠償等に係る適切な措置を講じる必要があります。

▲画面トップ


 
  労務相談と判例> その他労働契約の相談

Copyright (C) 2009 Tokyo Soken. All Rights Reserved

東京労務管理総合研究所