標準報酬月額の定時決定の改正 (2011年7月号より抜粋)  
     
 

標準報酬月額が高すぎるときに適用する保険者算定の新しい仕組みは?

 

Q

社会保険の定時決定の方法が、一部変わったという話を耳にしました。「標準報酬月額が、実態に比べて高すぎる」場合、修正の申出が可能になったということのようです。どのような場合に、申出が認められ、その手続はどうなるのでしょうか。

 

 
 
A

著しい差が例年発生する場合のみ修正可能

社会保険の保険料は、月例賃金については標準報酬月額をベースに計算します。

標準報酬月額は区切りのよい幅で(最小でも1,000円単位)決められ、原則、1年間通して用いられます。事務処理の簡便化という観点から設けられた仕組みです。

しかし、1年間固定の原則を押し通すと、不都合が生じることもあります。分かりやすい例は、歩合給社員の賃金です。

定時決定の対象になる4月から6月の間に、大きな契約をまとめ、多額の歩合給が入ってきたとします。その年の標準報酬月額および保険料は、一気に跳ね上がりてしまいます。

標準報酬月額と実際の報酬のかい離を調整するため、月変(随時改定)という規定が設けられています(健康保険法第43条)。

しかし、月変は「固定的賃金の変動」が要件の一つとなっています。歩合給の単価等に変更はなく、単に売上高が大幅に伸びた(あるいは、下がった)というだけでは、月変の対象になりません。

今回の改正は、こうした不満の声に一部応えるものです。定時決定は、基本的には、4月から6月の報酬の平均月額を基準として決定します。しかし、「報酬月額の算定が困難なとき、または算定した額が著しく不当であると認めるとき」は、保険者算定によることができます(健康保険法第44条)。

従来、保険者算定が可能な例として、次の3パターンが示されていました(昭36・1・26保発第4号)。

  1. 4月から6月の間に、遅配分や遡及昇給分の一括支給を受けたとき
  2. 4月から6月の間に、低額の休職給を受けたとき
  3. 4月から6月までの間に、ストライキによる賃金カットがあったとき

今回改正では、次のパターンが新たに追加されました。

  1. 当年の4月から6月の報酬から算出した標準報酬月額と、前年の7月から当年の6月までの間の報酬から算出した標準報酬月額の間に2等級以上の差が生じた場合であって、その差が業務の性質上例年発生することが見込まれるとき

注意が必要なのは、「著しい差が例年発生すると見込まれる」という要件が付されている点です。「たまたま、大口の契約を1つ取った」という場合は、対象にならない可能性が高そうです。

修正を希望するときは、事業主が日本年金機構(健保組合)に理由の申立書を提出します。本人の同意書や前年7月から今年6月の報酬額等を記載した書類等も添付します。

適用は、平成23年4月1日からです。

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