嘱託再雇用者の平均賃金の計算 (2013年3月号より抜粋)  
     
 

再雇用直後の嘱託社員が労災事故にあったが定年前の賃金も算入?

 

Q

定年後、再雇用してまもない嘱託社員が、作業場で荷崩れした鉄骨に当たり、ケガをしました。幸い軽傷でしたが、大事を取って、翌日1日、休業としました。休業補償のため、平均賃金を計算しますが、再雇用後の賃金で計算すればよいのでしょうか。

 

 
 
A

実態で判断し、前後の期間を通算する

平均賃金は、算定事由発生日(賃金締切日があるときは締切日)以前3カ月の総賃金額を暦日数で除して算出します。

しかし、今回のケースでは、再雇用後まだ3ヵ月が経過していません。平均賃金の算定に際し、@再雇用後の期間のみを用いるか、それともA再雇用前の期間も含めるべきか、という疑問が生じます。再雇用を再入社と捉えれば、前者(@)が正しいという気もします。

紛らわしい例ですが、試用期間を終えた従業員が、正社員となった後でケガをしたとします。この場合、正社員となった後の日数・賃金で平均賃金を算定するのが原則です。しかし、これは法令上、「試みの使用期間中の日数およびその期間中の賃金は、平均賃金の計算から除外する」(労基法第12条第3項第5号)という根拠規定が存在するからです。

身分の切り替えがあったからといって、すべて切り替え後の日数・賃金を計算ベースとする趣旨ではありません。

実際、再雇用者の平均賃金計算について、解釈例規(昭45・1・22基収第4464号)では、次のとおり述べています。

「再雇用者の平均賃金については、当該労働者の勤務の実態に即し、実質的に判断することとし、形式的には定年の前後によって別個の契約が存在しているが、定年退職後も同一業務に再雇用される場合には、実質的には1つの継続した労働関係であると考えられるので、算定事由発生日以前3ヵ月間を算定期間として平均賃金を算定する」。

再雇用前の賃金を含めると、平均賃金の金額が高めに算出されることにはなるでしょう。

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