判例 公休4日削減は合理性のない不利益変更 (2013年6月号より抜粋)  
   

 

 
 

実質的賃下げに相当 同業他社に比べても劣悪

サービス産業では、「休日」なとあってなきがごとし。担当者は、勤務割の作成に四苦八苦の毎日です。業績不振の会社では、「いっそのこと、休日の削減により人件費圧縮を図れないか」というアイデアが生まれます。しかし、本事件で、裁判所は「同業他社の状況」等も考慮したうえで、休日の削減は不利益変更に該当すると判示しました。

Fコーポレーション事件 東京地方裁判所(平24・3・21判決)


最近、お正月の「福袋」は日本のユニークな文化として外国人観光客に知られつつあるといいます。実際、1月1日から店を開き、福袋を売り出す小売店があちこちでみられます。

お正月に限らず、小売店の休店日は少なくなる一方で、それに加え、営業時間の長期化も進んでいます。小売店だけでなく、卸売業者、運輸業者等でも、それに合わせた対応が求められます。

法律上は、「週1回(または4週4回)の休日を与える限り、国民の休日に休ませなくても労働基準法違反とはならない」と解されています(昭41・7・14基発第739号)。祝日ですら休ませる必要がないのですから、それ以外の「会社独自の休日」については、いっそのこと、廃止にしたいという発想も生まれます。

本事件の被告は、国際総合航空貨物輸送を営む会社です。従来、土日祝日以外に、クリスマスや社員の誕生日など7日間の独自休暇を設けていまし右しかし、業績の大幅な落ち込みにより、このうち4日を出勤日に変更するという「大ナタ」の改革案を実施しました。

これに対し、100人を超える従業員が改定の無効を求めて裁判を起こしました。いわゆる「就業規則の変更による労働条件の不利益変更」の可否が争われることになったのです。

現在では、労働契約法で不利益変更の要件が明文化されています(第10条)。変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、@不利益の程度、A変更の必要性、B内容の相当性、C交渉の状況、Dその他の事情に照らし合理性がある場合、変更後の就業規則が反対者も拘束します。

B内容の相当性については、従来の判例を踏まえ、「同種事項における我が国社会における一般的状況」も考慮されるべきと解されています。

本事案で、裁判所は「変更後の年間休日日数は121〜122日で同規模・同種他社と比べ格別相当性を欠いているとはいえないが、少なくとも5月1日(メーデー)と12月30日(大晦日の1日前)については休日とする航空会社が過半数以上である」という判断を示しました。

これに加え、「休日の削減に対する代償措置が何ら講じられていない」点も踏まえ、変更後の合理性を否定しました。単純に休日を4日減らすと、所定労働時間が年間29時間増加し、実質賃金の2%減に相当するという状況では、会社側敗訴もやむを得ないといえるでしょう。

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