団体交渉を回避し退職者と直接交渉可能か (2013年7月号より抜粋)  
     
 

合同労組を通さずに退職者と直接話し合いの機会を持ちたい

 

Q

当社の従業員がある日を境として出社しなくなり、督促しても応じないため、やむを得ず解雇手続を採りました。ところが、間もなく、合同労組から解雇に関して、団体交渉したいと申し入れがありました。当社としては、「まず、本人と直接会って不満な点等ただを質したい(そのうえで円満解決したい)」と思いますが、労組の役員等の列席を拒むことはできないのでしょうか。

 

 
 
A

不当労働行為に該当するおそれがある

従業員が労働条件等に関して不満がある場合、個人として会社と直接交渉する方法と労組を通じて交渉する方法があります。労組を窓口とするのは、個々人としては微力な労働者が、集団の力を背景として、「使用者と対等の立場に立つことを促進する」(労働組合法第1条)のが目的です。

労働組合の代表者は、組合員のために労働条件等に関して使用者と交渉する権限を有します。使用者は、「雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒む」ことができません(労組法第7条)。団体交渉の拒否は、不当労働行為とみなされ、労組法で定める救済措置の対象となります。

まず、退職者が「雇用する労働者」に該当するか否かですが、「被解雇者が解雇後に組合加入(「駆け込み訴え」という)した場合」も、雇用関係の消滅を理由とする団体交渉は不当労働行為となります(労組法コンメンタール)。

団体交渉の対象となる労働組合については、「組合員がごく少数しかいなくても団体交渉権を認められる。複数組合は、それぞれが組合員について団体交渉権を持つ」と解されています(菅野和夫「労働法」)。

使用者が「現に労働組合と交渉が行われているにもかかわらず、直接労働者と抜け駆け的に交渉することは、団体交渉権等を侵害することになり、不当労働行為となるおそれ」があるとする地裁決定があります。本人が労組を通じた交渉を望むのであれば、「直接交渉」の強要は避けるべきです。

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