判例 職務等級格下げで減給可能 (2017年3月号より抜粋)  
   

 

 
 

ポスト消滅で一般職に 減額幅は許容範囲内

会社方針として特定部門やプロジェクトの解散が決定されると、配備されていた入員の異動が必要になります。適当な配転先がないとき、従前と同じ賃金支払が難しい場合もあります。本事件は、職務給制度の下で降級と同時に降給が行われたものです。裁判所は減額幅も許容範囲内であり、人事権濫用に当たらないと判断しました。

L産業事件 東京地方裁判所(平27・10・30判決)


解説に入る前に、降職と降級(降格)の違いを確認しておきましょう。

降職とは、ラインの管理職ポスト等を引き下げる(または肩書を外す)措置です。降職については、経営上の必要性に基づくもので、会社側の裁量性が広く認められています。

一方、降級(降格)とは、社内の資格格付けを引き下げる措置です。通常、資格と賃金処遇は密接にリンクしています。ですから、降級に関しては、どのような条件を満たせば降級が行われるか、労働契約・就業規則で明確に定めておく必要があるといわれます。

しかし、これは基本的に職能給制度を対象とする議論です。職能給制度では、役職と資格等級が「緩やかに」連動しているので、降職と降級を切り離して運用できます。

それに対して、職務給制度では、仕事と資格が連動しているので、ポストから外れれば、自動的に資格も下がるはずです。

この場合、会社はどこまで自由に降級に伴う降給を実施できるのでしょうか。人事権の濫用として、制限を受けるケースがあるのでしょうか。

本事件で、訴えを起こしたAさんは、プロジェクトチームのリーダーとして、管理職階層の職務等級(グレード)に格付けられていました。しかし、新薬開発のプロジェクトが解散となったため、リーダーの椅子も消滅してしまいました。

会社は「急きょポストを探しましたが、人員不足の部署にはリーダー相当のポストの空きがなかった」ため、一般職のグレードに降級する措置を行いました。当然、Aさんは納得しません。何ら落ち度がないのに降級(給)するのは人事権の濫用と訴えました。

裁判所は、「チーム解散により役職自体がなくなったもので、配置転換の業務上の必要性が認められる」「ポストを新設し、処遇すべき義務があるともいえない」と述べ、一般職降級を伴う配置転換もやむを得ないと判断しました。

そのうえで、「年間で6%弱の減収を少額ということはできないが、職務内容も変更(軽減)されていることを勘案すれば、通常甘受すべき程度を超えていない」と結論づけました。

大企業を中心として、職務給スタイルの賃金制度を採る企業が増加しています。本判決は、本来的な(欧米流の)職務給制度が厳格に運用されていれば、職務変更に伴う賃金減額も有効という立場を採りました。日本の人事管理がより「ドライな」方向にさま変わりしつつある状況を、クリアに映し出す判決といえます。

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