賞罰委員会と懲戒の効力 (2017年10月号より抜粋)  
     
 

賞罰委員会を開催しないと懲戒処分を通告しても効力が発生しない?

 

Q

中途採用で大企業の退職者を採用しましたが、「調査」と称して直行直帰を繰り返し、正常な労務の提供がなされません。本人を呼び出ただし、社長と役員で事情を問い質したうえで、懲戒処分を科しました。しかし、本人は「正式な賞罰委員会も開かず、一方的な懲戒通告を行うのは不当」と反論し、裁判も辞さない構えです。当社の対応には、ムリがあったのでしょうか。

 

 
 

就業規則に賞罰委員会の開催が記述されているかで決まる

大企業の退職者は、学歴だけでなく、職務経歴も立派な方が多いでしょう。しかし、だからといって中小企業で高い成果を出せるとは限りません。

大企業は職務分担が細分化されていますが、中小企業ではオール・ラウンド・プレーヤーが求められます。「フットワークの悪い」人間には不向きな職場といえます。

それはともかく、懲戒処分の有効性を検討しましょう。大企業(特に、歴史が長く、労組の強い企業)では、賞罰委員会等の規定が整備されています。ご本人の出自を考えると、今回の処分に対して「適正なプロセスを経ないから無効」と主張するのも、無理からぬところがあるでしょう。

しかし、中小企業レベルの場合、本格的な委員会の設置・運営は「ハードルが高い」のが実情です。

懲戒処分の要件については、解説する書物によって説明に微妙な差異がありますが、本欄では今回の問題との関連から4点にまとめてみました。

  1. 根拠規定の有無
    まず、前提として、懲戒の事由と処分の種類・程度が就業規則に明記されている必要があります。

  2. 懲戒事由への該当性
    具体性を欠く暖昧な規定の場合、就業規則のどの条項に該当するか(あるいは、しないか)が争われ、会社側が敗訴するケースも見受けられます。

  3. 懲戒の相当性
    形式的に懲戒事由に該当しても、「社会通念上相当なものと認められない」場合、無効と判断されます。

  4. 手続の適正さ
    これが、今回の問題と絡んできます。前記@〜Bの要件を満たしていても、手続に適正さを欠くと、処分の有効性が認められない場合があります。

例として、社長の解任を図った従業員を会社が解雇した事案(セイビ事件、東京地決平23・1・21)をご紹介します。裁判所は、「懲戒委員会は、行為内容を正確に把握したうえで、懲戒処分の要否を検討したわけではなく、適正手続きの趣旨に反する」として、解雇無効と判示しました。

しかし、これは「懲戒を行う場合、懲罰委員会の討議を経ることが必要」という根拠規定が存在したからです。規定がない場合も、特段の支障がない限り、本人に弁明の機会を与えるべきなのは、いうまでもないことです(菅野和夫「労働法」)。しかし、懲戒処分には「委員会の審議が必須(なければ即無効)」という意味ではありません。

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