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2013年の記事

 

 

 

(株)アクト

■「水質浄化ビジネスで活きた川を取り戻す」

業種:水質浄化技術の開発
(株)アクト


企業の事業転換には様々な要因があるが、公共事業の補償コンサルタント・測量設計業として昭和58年に創業した(株)アクト(徳島県吉野川市)の尾北俊博社長が、土壌改良や水処理関連の環境事業分野への参入を決意した背景には、「活きた水の流れる川を取り戻したい」との強い思いがあった。仕事柄、ずさんな水処理を目の当たりにすることが多く、その経験が水質や土壌の浄化技術の研究へと向かわせた。

平成15年に「土壌汚染対策法」が施行されたのを機に、生態系にやさしい商品の開発を進め、無機系の水質浄化剤と土壌改良剤を生み出した。しかし、建設業界自体が先細る時期に公共工事用として業界に売り込んだことが裏目に出て、売り上げが伸びない。大手が手を出さないニッチ分野で、オンリーワン企業として事業を展開したいと、各種セミナーや講習会に参加し、新たな商品開発を模索する日々が始まった。

大気汚染防止法の改正や環境意識の高まりなどにより、日本でも水性インキや水性塗料、水溶性接着剤などへの切り替えが進むと、廃棄物処理に新たな課題が浮上してきた。溶剤のように容量が減少しない水性廃液は、全量を産廃業者に託すことになり、処理費用も増大する。そこにいち早く着目した尾北社長は、廃水を無害化し減容化する水性塗料専用の廃液処理剤を開発。販路を求めて慣れない営業に奔走した。

この販路開拓を後押ししたのが、中小機構の販路開拓コーディネート事業である。公共事業の入札受注の経験しかなかった尾北社長には、企業訪問や名刺交換、商品のプレゼンテーションなどの実地研修は新鮮な驚きで、ビジネスの世界に開眼したという。この支援を機に産学官連携事業にも参加し、香川高専と共同で新たな廃液処理剤と処理装置を開発し、中小企業向けにセット販売するビジネスモデルを構築。更に、水槽の濁りやアオコを30分程度でスピード除去するタブレットも同校と共同開発した。

これらの水処理技術により、「環境保全に資する水性塗料廃液処理用の無機系凝集剤の開発と水処理の用途開発推進」で、「2011四国産業技術大賞」の技術功績賞・最優秀賞を受賞。目下は、香川県と香川高専との産学官連携契約により、嫌気性の菌を使った食品汚泥の削減を目指す研究・開発に取り組んでおり、廃液処理のスペシャリスト企業として着実に歩を進めている。尾北社長の、「子供のころ遊んだ50年前の里山を取り戻したい」との強い思いが、水処理ビジネスの開花と結実を導いたのである。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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