株式会社あいや
■老舗企業が品質管理で゛業界初゛の試みに挑戦
業種:抹茶生産
株式会社あいや
産業界で「安心、安全」が今ほど注目を集めた時代はない。人間の生命に直接関わる食の安全については、言わずもがな、である。中小企業でも、この命題を忘れては経営できない。安全管理をおろそかにすれば、すぐ世の中から退場を宣せられる。徹底した品質管理を行うにはコストがかかるが、これを無駄だと考えず、経営の中心に置く企業が勝ち組の陣営に入れる条件を備えることになる。
2008年に創業120年を迎えた老舗の(株)あいや(杉田芳男社長)は、抹茶生産量日本一を誇る愛知県西尾市に本社を置く。同社の抹茶生産量は年間700トンで、わが国の抹茶生産量の約45%を占める。長年にわたって高いシェアを維持できた理由について杉田社長は「1980年代初めから、商品の安全や品質管理に万全を期したこと」と語る。
抹茶は一見したところ違いのわかりにくい商品だ。また、抹茶の原料となる碾茶(てんちゃ)は苗を植えてから収穫まで最低でも7年かかり、しかも契約農家から購入するので、不慮の出来事がない限り経営は比較的安定推移する、と思われがちである。ところが同社は伝統を大事にしながらも新市場開拓や品質管理面で、「業界初の試み」を繰り返し行い、あらゆることにチャレンジしてきた。抹茶は、価格の違いがわかりにくく一般消費者にもなじみが薄いことから、品質や色、味、香りといった価格の根拠を数値化して開示したのもその一例だ。
また、製菓や飲料などの食品原料市場にいち早く参入するとともに、業界初の品質管理・保証の国際規格「ISO9001」の認証を取得。さらに国内の有機栽培認定「有機JAS認証」に加え、欧米の同様の認証も取得した。こうして安心、安全な抹茶の供給体制を築き上げている。自慢の石臼びき工程は、温度と湿度を厳密に管理したクリーンルームで、完全自動化した1300台の石臼が一日2トンの抹茶を製造する。前近代的に思える石臼びきだが、「長年の歴史に基づいたもので、原料の良さを損ねない最良の製法だ」(杉田社長)という。
抹茶は急激な需要増に対応するのは難しいので、今のペースを崩さず緩やかな成長を目指す。今一番力を入れているのは海外市場での展開だ。環境、健康意識の高まりから有機栽培の茶葉の人気が高く、米国、欧州、中国に現地法人を設置している。2007年には(社)中小企業研究センターから「グッドカンパニー大賞」の優秀企業賞を受賞した。伝統にあぐらをかかず、積極的な市場開拓と品質管理に挑み続ける企業が勝ち組になるのは、どの分野の企業にも当てはまると言える。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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