東京総研トップへ

元気な企業(最新)

 

 

 

(株)アーネット

■「サムシング・ニューで"反転授業"を後押しするシニア起業家」

業種:eラーニングシステムの開発
(株)アーネット


2014年版中小企業白書に興味深いデータが載っている。起業家の年齢別構成の推移がそれで、1979年時点では18・9%だった50歳以上の割合が、その後、上昇の一途をたどり、2012年には46.7%と半分弱を占めるまでになっているのだ。60歳以上で見ると、変化率はさらに大きく、6.6%から32.4%へと30数年間で5倍も伸びている。白書では「シニア層は退職後も何らかの形で働き続けたいと希望する者が多く、その一つの選択肢として起業があり、動機が明確で意欲も高い」と、"シニア起業"の一段の活性化を占っている。

シニア起業の好サンプルとして、2000年設立のIT企業、アーネット(東京都町田市)が挙げられる。同社は、ソニーの研究開発部門に長く籍を置き、画像通信事業室長などを務めた岡田安人さんが、定年退職後、母校の電気通信大学との共同研究案件を事業化する電通大発ベンチャーとして立ち上げた。設立当初は、学生が他大学の講義も履修できるようにする「大学間の単位互換システム」を製品化し、その延長線上で現在は各種eラーニングシステムの開発・販売に力を入れている。

「私はサムシング・ニュー(何か新しいもの)以外は仕事ではないと考えている。だから1を10にするより、ベンチャーとして起業したかった」。岡田社長は、起業の動機をそう説明する。今、全力投球中のeラーニングシステムは、高等教育の従来の形態をガラリと変える『反転授業』のためのシステム。サムシング・ニューそのものともいえよう。

反転授業とは、授業と宿題、主教材と副教材の役割を"反転"させ、授業時間以外にデジタル教材等で知識取得を済ませて、教室では復習や応用問題に取り組むといった学習形態を指す。岡田社長は「ある学長が『学生から一つも質問の出ないような講義、誰も聞いていないような講義を、なぜ教室に集めてするのか』とつぶやいていた。大学教員17万人の全員が当社製品のポテンシャル・クライアントになる。反転教育は米国でブームになりつつあり、今が踏ん張りどころだ」と語っている。

ソニー創業者、井深大氏の一番のモットーは「他の人がすでにやってしまったことは、やらないこと」で、「ものの種類であれ、つくり方であれ、売り方であれ、新しいものを考案しよう」「誰も手がけない新しい創造に取り組め」との言葉を残している。井深イズムを踏襲する岡田社長のサムシング・ニューへの挑戦は、後に続くシニア起業家たちに多くのヒントを与え、勇気づけることにもなろう。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


著作者の承諾を得て掲載しています。無断転載ご遠慮願います。

 

▲ TOP

2014年の記事に戻る