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元気な企業(最新)

2008年の記事

 

 

 

 

 

エルム

 

鹿児島から世界に羽ばたく頭脳集団

業種:電気機械器具製造
エルム


NHKの大河ドラマ「篤姫」は企業経営者にも関心が高い。国難を救う篤姫の生き方は経営者の「目」と共通するところがあり毎週日曜日テレビから目を離せないという。同じ鹿児島発ながら、篤姫が国を守るために島津藩から江戸に羽ばたいたように、電気機械器具製造のエルム(鹿児島県南さつま市)は自社製品を武器に世界に大きく羽ばたくことになった。鹿児島発の世界企業に、である。

宮原隆和社長はものづくりには妥協を許さず、顧客ニーズに情熱を持って対応してきた。「下請けはやらない。ジャパニーズスタンダードのものづくりをし、さらにワールドスタンダードのものづくり企業を目指す」と経営理念を吐露する。ただ鹿児島県は農業県。そうした地域から世界に通用する先端電子製品をどうして生むことができたのか。

現在の柱は電子、機械、ソフトの3部門。1980年の創業で、最大の売りものは2000年に開発した光ディスク修復装置。CDやDVDの読み取り面に付いた傷を修復する装置で世界28カ国以上と取引し、世界シェアも90%以上というすごさ。しかし一足飛びに、この先端製品が生まれたわけではない。自社が立地する農業県という地域のニーズを十分把握したアグリビジネスの製品開発の優秀さがその土台に横たわっているのを見逃すことはできない。

1990年に地元特産品であるキンカンの自動計量包装機を開発、さらに全自動オクラ選別ネット包装機などを続々開発。最近では、地中にネットを敷設し、その上にラッキョウの種球を植え付け、収穫時にネットを掘り上げるという新しい栽培法によるラッキョウ栽培省力化装置を開発した。これまで農業・工業分野で手がけた製品は累計100品目以上になる。現在の「農商工連携」の先駆者とも言えようか。地域密着で「顧客ニーズに100%でなく120%応えてきた」(宮原社長)という地に足のついた研究開発が、今日の優秀な電子製品に結びついている。

宮原社長にとってバス1台程度が理想の会社だ。ものづくりに徹し世界に伍して戦えるのは規模ではなく情熱と優秀な頭脳を持つ技術開発集団だということだろう。さらに現状について「ものづくりの好きな人にはたまらない会社」と自負する。自分の頭に描いている会社ができつつあるということか。一方では、社会における技術者の評価の低さに常々疑問を抱き、子供たちを前にした講演などでは熱意と気迫でものづくりの楽しさと大切さを伝える。2007年に「第2回ものづくり日本大賞優秀賞」を受賞。地域活性化が大きな課題になっている今、こんな中小企業が「地方の元気」を盛り上げてくれるのだろう。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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