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2008年の記事

 

 

 

 

 

FJコンポジット

 

コスト削減にも知恵が必要

業種:複合材(燃料電池用のセパレーター)の開発
FJコンポジット


コスト削減は製造業にとって永遠の課題だ。ひと昔前、トヨタ自動車のトップが「乾いた雑巾でも、絞ればまた水が出る」と言ったことがある。「飽くなきコスト削減を追求する必要がある」ということを比喩したものだが、この精神は未だにトヨタ自動車の全社員に生き続けている。複合材を開発するFJコンポジット(静岡県富士市)は今、燃料電池用のセパレーターを低コストで生産する技術の開発に取り組んでいる。

経産省の「中小ものづくり高度化法」の認定を受けた同社が、全力を挙げて挑戦しているものだ。というのも、燃料電池は地球環境問題などから注目され、様々な分野で導入が始まっている。そこに用いられるセパレーターは、水素と酸素の供給を遮断するための重要部品だが、普及のネックになっている一つに、セパレーターが燃料電池の価格を押し上げる要因になっていることが挙げられる。無論、セットメーカーはハイテク部品として高い品質を要求する一方で、コスト削減も要求する。

メーカーが製品コストを削減する場合

  1. 人件費の圧縮
  2. 低価格材料の調達
  3. 生産工程の見直し
  4. 量産効果の発揮
  5. 輸送コストなどの経費の削減

などが考えられる。これらを総合してコスト削減するのは当然だ。メーカーの場合、生産工程を見直すだけでもかなりコスト削減が図れる。例えば生産ラインが1分タクトで動いている場合、この動きを6秒短縮すれば、単純計算だと10%のコストカットになるわけだ。同社では、生産スピードを現在の100倍にアップする努力をしており、1枚数千円と言われる燃料電池用セパレーター価格を100円以下にする考えだ。

同社は黒鉛とフェノール樹脂の複合材でセパレーターを試作した。ところが、高温でプレス成形するため、完成品になるまでの加工時間が1枚当たり10分はかかってしまう。この時間を短縮するために、逆転の発想で冷間プレスを利用、プレス後、一括して炉で加熱するようにした。この方法の場合、1枚当たり6秒で完成品になる。時間だけのコストを計算すれば、高温プレスに比べ100分の1に削減できるわけだ。  

産業界にはコストカッターという言葉がある。コスト削減に熱心な人達をいうが、同社は全員がコストカッターだ。単に人員削減やパート・アルバイトの活用などにより労働コストを抑えても、真の意味でコストカッターとは言えない。コスト削減に役立つような、知恵を出し、知恵の中から新しい技術を生みだすからこそコストカッターであり、乾いた雑巾もまだ絞れることになる。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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