株式会社淵上ミクロ
■経営キーワードは具体的な経営指針
業種:高性能冷却部材開発
株式会社淵上ミクロ
企業経営をスムーズに進めるためには当を得た「キーワード」が役に立つ。 経営キーワードは目的や目標を明確にし、社員の意識や行動を同一の方向に導く効果がある。社是や社訓を持つ企業は多い。そこには行動指針や目標が盛り込まれているが、抽象的なフレーズが多く、社員全員に理解させるのは大変である。これに対して経営キーワードは短いフレーズながら目的を明確にして、進むべき方向を示すケースが多い。
株式会社淵上ミクロ(鹿児島市)は「冷やす技術」をキーワードにしている。このキーワードが経営指針や開発目標となり、対外的なアピールにもつながっている。同社の母体は印刷会社だ。セラミックICパッケージ用ポジフィルムを手掛けたことがエレクトロニクス分野に参入するきっかけとなり、エッチング製品、スクリーンマスク、フォトマスクと発展、半導体など電子部品の基盤分野に範囲が拡大した。この間、エレクトロニクス部門の中核を担っていた精密事業部が分離独立して今日に至っている。
キーワードは企業の実力や周辺の状況、置かれた時代などにより変化する。同社が印刷会社の事業部門だったころは、印刷をベースにした言葉がキーワードだったろうし、エッチングの需要が拡大している時は、その関連用語がキーワードの座にあっただろう。そして今は「冷やす技術」がキーワードだ。将来は全く異なったキーワードが生まれる可能性もある。
「冷やす技術」といっても、目に見えるものではない。それをキーワードとしてアピールすることで、経営者が何を目指しているかが社員にははっきりと分かる。同社では経済産業省で実施している「戦略的基盤技術高度化支援事業」の委託事業を受け、「高性能冷却部材の開発」というテーマで取り組んでいる。 カーエレクトロニクスの進展により車載用の半導体や高輝度発光ダイオード(LED)が大量に使用されるようになり、発熱量も増加しているため、この熱を取り除こうという技術だ。
車載用電装品は搭載スペースが限られているため高性能冷却部材が不可欠となっている。同社は高精細加工技術を駆使して、狭い筐体で使える放熱効率に優れた冷却部材(FGHP)を開発している。この技術を核に車載用半導体の高性能冷却部材に挑戦しているわけだ。開発過程では「保有していない技術を取り入れるために、大学の頭脳を活用する方針」(上田亨社長)だ。ここでもキーワードが生きてくる。外部の知恵や技術を借りる場合、同社のように「冷やす技術」というキーワードがあれば、社内外を一本にまとめる力になりそうだ。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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