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2008年の記事

 

 

 

 

 

冨士ダイス

 

製品に命を吹き込む「生命工具」

業種:耐摩耗工具製造
冨士ダイス


刀工は精神統一してから鍛錬すべき刀剣に向かうという。刀に命を吹き込むため、全身全霊を込めて打つからこそ、銘刀と呼ばれる作品ができあがる。大企業でも中小企業でも、生産者が自信を持って世に送り出している製品は、自らの手で命を吹き込み、最高の状態に仕上げた製品だと思う。「生命工具」−これは冨士ダイス(東京都大田区)が創業当初から引き継いでいる経営理念である。 

木下徳彦社長は生命工具について「我々は工具に命を吹き込んでいる。その工具がお客さまの製品の命、つまり品質を決める。だから工具を開発し生産するにあたって、手を抜くわけにいかない」と強調する。とくに、超硬合金を使った耐摩耗工具は、技術に裏打ちされた命を吹き込まない限り、製品としてユーザーの満足が得られないと考えている。 

1949年の創業以来、超硬合金を使った製品が同社の柱となっている。とくに1954年に開発したフジロイは、同社にとって超硬工具の原点となった製品であり、フジロイを用いたダイス・プラグは国内シェアの90%を持っているほどだ。超硬工具の生産に当たり、ほんの僅かな異物が混入しただけで、製品の価値はゼロになってしまうだけに、品質管理を含め、常に製品維持のための努力を続けている。刀工が真剣に立ち向かう姿勢と共通している。 

同社は「ナノ微粒超硬合金を用いた精密金型の開発」を進めるため、07年に経済産業省から、「中小ものづくり高度化法」に基づく認定を受けた。無論、多くの知恵を必要とするプロジェクト。同社は粉末を焼結して合金にする分野を担当、従来の超硬合金に比べ、飛躍的に硬度と耐摩耗生が向上する技術の開発を目指している。実現すれば非球面ガラスレンズ用耐摩耗性高精密金型などが出来るようになるという。 

同社が開発した超硬合金を用いることで「生命金型」が生まれ、さらに「生命工具」と金型から新たな生命を持つ製品が生まれるはずだ。モノの命とは生産者のモノに対する真摯な取り組みの発露であり、魂そのものだろう。モノに命を吹き込むことは「匠の世界」に生きる技術者や職人にとって「モノ作り冥利」に尽きるのではないだろうか。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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