富士特殊金型株式会社
■職人技をデータベース化
業種:プラスチック金型製作
富士特殊金型株式会社
「職人の勘」、「職人の技」は伝統産業だけでなく、金型製造や金属加工などモノ作りを支える現場で生き続けている。ところが、職人が第一線を退くことによって、これらの技が途絶えることが予想される。団塊世代の職人がリタイアしている今、技の伝承が危機に陥っている。不況は乗り切れば新たな展望が拓けるが、職人が次々にリタイアすると、企業は存続さえおぼつかなくなる。
プラスチック金型の富士特殊金型株式会社(東京都江戸川区)も職人技に依存してきた。プラスチックの成形は金型が命である。金型の出来具合が製品にストレートに反映する。例えば樹脂の流れにより成形精度が大きく変わる。そのため樹脂の流れを制御する金型づくりは職人技に頼らざるを得ない。バリの発生も、職人の勘を頼りに防ぐことになる。顧客から「富士特さんなら何とかしてくれる」と言われるが、これも職人に負うところが大きい。
しかし、他社と同じように、職人技を持つ従業員が高齢化し、リタイアを余儀なくされている。「何とか彼らの技術を残さなければ、会社が廃れてしまう」(布施義久社長)という事態に直面していた。いろいろと考えた末、得た結論は「職人の勘という暗黙知を、誰もが出来るようにするための形式知に転換する」(同)ことだった。つまり、職人の勘をデータベース化することに行き当たったのだ。
まず、すべての作業案件でデータを採り、データベースの土台を完成させた。そしてデータベース作成へと進むが、その過程で持ち込まれたのが、シリコンウエハーケースのパッキン成型用金型だった。これまで調整段階では、着色したオイルを樹脂に見立てて、金型に何度も流しながら仕上げていく方法が用いられていた。職人技が最大限に発揮される作業である。同社ではこの作業に加え、データベースや解析ソフトを用いたシミュレーションを何度も繰り返した。
その結果「金型のわずかな曲がりや段差が、摩擦熱などにどのように影響されるかが見えてきた」(布施隆二専務)という。解析ソフトなど近代兵器があればこその成果である。同社ではこの職人技と、シミュレーション結果をデータベースに加えた。そして「暗黙知をさらに分析し、初心者でも設計・製作ができる環境を整える」(布施社長)ことを目標にしている。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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