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2010年の記事

 

 

 

赤塚刻印製作所

■金属のハンコは手彫り彫刻で

業種:手彫りの金属のハンコ製造
赤塚刻印製作所

金属には、型番号や記号、メーカーのロゴなどあらゆる文字やマークが入っている。この印字に使う、いわゆる「金属のハンコ」を手彫りで掘っているのが赤塚刻印製作所(東京都大田区)だ。比較的荒い部分は機械で加工することも可能だが、機械の場合は刃が高速回転するため、例えば「A」の一番上のとがった部分は丸まってしまい、鋭角に加工できないのだ。

自動車メーカー、電機メーカーの刻印を数多く手がける赤塚正和社長は0.5mmの文字を掘ったことがあるという。ハンコなので、文字部分を残して、周囲を掘る。100分の5mmずつ掘っていくという世界。ほんのわずか掘りすぎたら、字の部分は消えてなくなってしまう。大事な箇所は集中力を極限に高め、息を止めて掘る。ほんの一瞬の勝負だ。

赤塚さんの彫刻機は双眼鏡の片眼部分を取り付けてあるオリジナルのものだ。目で双眼鏡を覗き刻印を確認しながら、左手は深さを調節、右手で原盤をなぞっていく。足で踏むレバーは削りくずを飛ばすエアーを出す。全身を使った作業だ。彫刻機の最も重要な部分である刃先は、あらゆる角度、長さ、細さのものが必要だ。これらの刃先も全部赤塚社長が作っている。

ジャンボジェット機に使われるコネクタの刻印が輸入した後に間違いだったと気づき、打ち直したいと大急ぎで航空メーカーの担当者が駆け込んで来たことがある。どこをまわっても「できるけど、数日はかかるなあ」と言われた。「何とか1日で印字し直したい」と焦るばかり。赤塚社長は掘るための刃から作り、刻印してあげたところ、担当者は大喜び帰って行っていった。所要時間は実に1時間だった。40年の経験の中で最も印象に残っている仕事だという。

赤塚社長は、理科教室で小学生に教えたり、中学生の職場体験を受け入れたりオープンにして、次の世代に技術を残していきたいと考えている。また、「大田区を福祉の街にしたい」と夢を語る。電動車椅子はほとんど輸入されているのが現状。使っているねじの規格が日本のものと違うから、壊れたら修理するのに時間がかかる。そんな時、地方から羽田空港経由で大田区に来たら、区の企業が連携して、その日に直せる。こんな地域にしていきたい。赤塚社長の挑戦はまだまだ続く。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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