フジゲン株式会社
■どん底こそ企業の真価が出る
業種:エレキギターの製造
フジゲン株式会社
人に歴史あり、ではないが、企業もまた歴史ありだ。浮沈が必ずある。頂点のときではなく、どん底のとき、トップがどう針路をとるか、極めて大事だ。エレキギターの老舗、フジゲン株式会社(長野県松本市、上條欽用社長)が、市場狭隘化の中で、最盛期50社あった業界の厳しい生き残り競争に耐え、わずか数社となった中の1社に踏みとどまり、今や、経営のIT化も取り込みながら、再びエレキギターメーカーとして世界市場の中で個性的な攻勢をかけるまでになった中にそれがよく表れている。
同社の設立は1960年(昭和35年)。富士弦楽器製造株式会社として、バイオリン試作で発足、間もなくエレキギター製造に転ずる。戦後の“余暇”を回復した人々に受け入れられ、ビートルズ、ベンチャーズのブームで需要は世界的になった。90年代前半需要も最盛期を過ぎ、業界は淘汰の時代に入った。同社も倒産寸前まで追い込まれ、人員整理も余儀なくされた。どん底だった。フジゲンという社名変更を考えもした。「でも創業者たちが込めた弦へのこだわりは残そうと結局ゲンは残した」と上條社長はいう。同時にフジゲンのコア技術は何か、どん底の中で考え抜いた。木工技術、塗装技術、これに音に対する技術がコアだという考えに至る。運もあった。自動車用のパネルの注文が飛び込んできた。コア技術が生きた。この自動車部品部門がいまや大きくなった。しかし、エレキギター部門も縮小しながら死守してきた。なんといってもエレキギターには自社ブランド品というメーカーとして何物にも代え難い喜び、満足があるからだ。
財団法人長野県中小企業振興センターの支援を受けながら、エレキギター販売を中心に取り組んだ。独創的なホームページを起こし、オンラインショップにも乗り出した。同社のホームページはユニークだ。ボディーの色、全体のデザインなどを注文者がホームページ上で自由に選択できるなど、顧客の好みをくすぐる仕掛けが無数に埋め込まれている。アクセスは国内のみならず世界からも舞い込んでいる。同センターの優れたアドバイスと上條社長の思い切ったIT投資は好循環を生み、業績も上昇。フジゲンは2007年の財団法人全国中小企業情報化促進センター(NIC)の「中小企業情報化促進フェアinTOKYO」情報最優秀企業賞(中小企業長官表彰)を受賞した。また、県センターも同社の情報化推進を支援したことで最優秀サポート賞(中小企業長官表彰)を受賞した。
「ネットでの販売はまだまだ少ないが、松本の山の中から自社ブランド品を世界に売れる喜びは大きい」と上條社長、さらに前進、前進の構え。どん底からはい上がった強靭さが同社を筋肉質にしている。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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