伊藤鉄工(株)
■川口鋳物産業のリーダー的存在
業種:鋳物業
伊藤鉄工(株)
幕末動乱期、勝海舟はここに大砲の製造を指示。明治以降は軍需産業の発展もあり大いに栄え、戦後は高度成長の波に乗った。鋳物の街、埼玉県川口市。昭和40年代のオイルショック前には約
600社の鋳物工場がひしめいていたこの地も、今は実働ベースで約
100社。時代の流れについていけなかったり、広い用地や人材を求めて出て行ったり。大きな製品を扱う場合は、製造に必要な木型や金枠も大きくなり、広い用地が必要だ。
そんな川口の鋳物産業のリーダー的存在が伊藤鉄工(株)(埼玉県川口市:伊藤光男社長)だ。川口鋳物工業協同組合の理事長も務める伊藤社長は、地域全体の将来を眺めている。今の鋳物企業は、特殊な鋳物をつくれる、取引先と太いパイプがある、品質で勝負できる、など特徴ある企業ばかり。以前あった「仕事の取り合い」は全くなくなったという。時代の変化にも強い企業が残っているとも言える。
伊藤鉄工(株)は従来から、建築用鋳物を得意としてきた。配水管用金具やマンホールの蓋など。品質には絶対的な自信を持つが、これだけではなかなかやっていけなくなった。そこで、鋳物製フェンスやビルの名称などを示す銘板(めいばん)など景観の分野に進出し、近年は、家庭用フライパンや鍋にも挑戦している。
柱はあくまで建築用鋳物。この分野を得意とする企業は、もはや日本に多くはない。将来、仮に住宅・マンションの新築件数が伸びない場合でも、耐震補強や改修が必要であり、需要は未来永劫下がっていくわけではない。「そんな時代に高品質の商品を提供できるよう、今からしっかり準備している」(伊藤社長)という言葉は力強い。
川口の街は商業施設と高層マンションが目立ち、都市化・ベッドタウン化が進む。江戸時代初期に、農業の副業として手工業から発展した川口の鋳物産業。高度成長期など生産量が飛躍的に増えた時代も「多品種少量生産」を得意としてきた。こんな川口の鋳物産業は、むしろこれからの時代にマッチしていくのかも知れない。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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