池上精工株式会社
■顧客への“思いやり”でニーズをつかみヒット製品を生む
業種:金型メーカー、金型を使わない切削加工
池上精工株式会社
中小企業が大半を占める金型産業は、優勝劣敗のはっきりした受注型産業だ。ユーザーのシビアなニーズに応えられる企業が生き残る。長年、プレス金型を製作してきた池上精工株式会社(名古屋市、池上正智社長)は、多品種少量加工の時代に適した生産システムを追及する中から、「金型を使わない切削加工」という逆転発想の独創製品を開発。それがニーズに合致してヒット製品となり、いまでは同社の看板製品に育った。
アルミサッシの多くは金型を用いたプレス加工で製作されるが、同社が開発した加工機「Sash−IN」は金型を使わない。独自のコントロール機能を持つNC(数値制御)を内臓し、切削加工方式で多様な形状のアルミサッシを製作する。小型な卓上機ながら3〜5メートルもの長尺材料が加工できるのも業界初のセールスポイント。金型不要だから費用負担が少ないうえ、この装置を量産ラインに組み込めば各種サッシの多品種少量加工が実現するのでユーザーのメリットは大きい。特に、長尺材料が加工できる小型機は他にないので、アルミサッシ分野だけでなく、木材や樹脂製品分野への利用も有望視されるなど今後の期待は強い。
同社は1968年、金型メーカーが集積する愛知県に創業した。当初から金型製作に特化し、アルミサッシのプレス金型とプラスチック部品の射出成形用金型を強みに業容を拡大してきたが、金型業界の競争は激しい。技術力を強化するために、産学連携を進め、そこから「Sash−IN」が生まれた。新装置がヒット製品化したことで、業績面で安定度を増した点は大きい。加えて、金型不要の新発想は同社の技術開発や製品づくりにもインパクトを与え、ユーザーが求める多様な加工に対応するNCプログラムの作成という新たなビジネスモデルを構築するなど、事業展開にも新味を見せ始めたところでもある。
受注型産業はユーザーの発注に左右される宿命にあるものの、「顧客に対する思いやりを加えることで、独創的製品が生み出せる」という池上社長。今後も金型メーカーに徹するとともに、思いやり経営を貫くことが熾烈な競争に打ち勝つ武器と決め込んでいる!
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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