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2013年の記事

 

 

 

(株)井口一世

■「熟練の職人技をITに落とし込む」

業種:金型レス精密板金加工
(株)井口一世


社長の名前=企業名というユニークな会社がある。精密板金加工の(株)井口一世(東京)がそれ。ユニークなのは社名だけでない。金型レス、切削レスとIT(情報技術)の徹底活用という三つを売りものとする同社のモノづくり技術も「他に類をみない」と評されるオリジナリティーあふれるもの。最近はやりの3Dプリンターとは異なるアプローチで次世代モノづくりの一翼を担おうとしている。

「未来がまぶしいから、社員がサングラスをかけるような会社にしたい」。今年2月、同社は中小企業基盤整備機構主催の「ジャパン・ベンチャー・アワード2013」で、これまでの機械加工の常識を超えるようなモノづくり技術が評価され経済産業大臣賞に選ばれた。「社員がサングラス…」は井口一世(いっせい)社長の大臣賞受賞あいさつのひとくだり。同社の売り上げはこの5年間で2倍以上に増え、まぶしい未来に向けて快進撃を続けているところだ。

金型を使わない金型レス、切削加工を用いない切削レスに加えて、「熟練の職人技をITに落とし込んだ」(井口社長)ことで、高品質、短納期、低コストと3拍子そろった精密加工を可能にした。職人技の落とし込みとは、蓄積した加工条件や加工法などの情報に基づく独自プログラムを開発して、専門知識や経験がなくても職人技に匹敵する高精度な板金加工を行えるようにしたもの。その成果として、女性社員が現場作業を担えるようになり、現在、社員の7、8割を女性が占めている。

平成13年創業の同社の前身は、井口社長の父親が経営してきた金型を使った板金業。それを店じまいし、金型レスの精密板金加工という事業形態で起業した。立ち上げに際して、社名を印象づけることと、社長の覚悟を込めて自身の名前を会社名にしたという。日本のお家芸ともいわれる金型にあえて背を向けたのは、小ロット生産や初期投資の抑制といったニーズが強まるなかで、高価な金型を敬遠する顧客が増加すると見極めたためだ。

同社の売り上げはこの5年で2倍以上に拡大。年率約20%増のペースで成長を続けて、平成25年3月期には54億円を達成し、見極めが正しかったことを立証した。「製造業に革命をもたらす」と、いま、もてはやされている3Dプリンターも、金型レス、切削レスの手法となる。3Dプリンターと同様、時代の潮流に乗った感のある井口一世の行方から目が離せない。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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