株式会社インスタイル
■「民族楽器を楽しむ」で起業化図る
業種:民族楽器の輸入販売
株式会社インスタイル
町中で普通の楽器店はよく見かけるが、アフリカ、アジアなどの「民族楽器」にこだわってビジネスを起こし、軌道に乗せた珍しいベンチャーがある。神奈川県横須賀市に創業した(株)インスタイル(鈴木正明社長)がそれで、単なる輸入販売にとどまらず、民族楽器を手作りしたり、演奏法を教えたり、いわば“文化”をビジネス化し、顧客を広げてきている。
同社の創業は1989(平成元)年。世界民族楽器館「ティンガ・ティンガ・ハウス」を開設、アジア、アフリカ、南米を中心とした民族楽器の輸入販売を始めたのがそもそも。92年、タンザニアに現地法人「クワンザ・ママ」を設立したのをはじめ、民族楽器の「現場」との接触密度を高めていった。単に珍しい民族楽器を輸入して店先に並べておくにとどまらず、学校や文化施設に出向き、それぞれの楽器の現地の文化、背景も含めて紹介、「さわれる民族楽器」と銘打ち、顧客の掘り起こしを図っていった。現場の文化にじかに接してもらおうと、タンザニアの画家を招いたり、コートジボアールの民族舞踊団を招いて、楽器演奏も含めて異種文化に“臨場”してもらう試みを相次いで進めた。こうした、楽器のみでなく、楽器を包み込むカルチャーを届けようという作戦がじわじわと客層をつかみ、いまや、アフリカ、アジア、南米など世界30カ国の民族楽器300種を販売するまでになった。
その間、2001年に、独自開発の「手作り民族楽器キット=Tinga Do」10種の販売に乗り出すという、新たなビジネス領域に入っていった。02年に、この手作りキット事業は中小企業経営革新支援法の承認を得ることができ、キット部品のインドでの生産にも踏み切った。さらに04年には、手作りキットが学校教材として採用されることとなり、全国の学校に販路を開けるようになった。商品群も強化、18種の発売へと広がりを見せ、手作り路線は経営の新しい柱に育ち始めている。一方、ネット上に民族楽器の演奏法教室を開いたり、ネットによる販売も着々整えている。
同社は、もともと、独自の企業理念を持ってきた。国際化、国際化とはやされる我が国だが、真に国際的な人材は育っているのかとの疑問を同社は投げかける。「民族楽器にじかに触れて、音楽を味わってもらい、また手作りを通じて、いろいろな民族の文化に深く接してもらってこそ、国際化を身近にできると思う」と鈴木社長は言う。“異文化を楽しむ”というコンセプトの、新しいビジネスが膨んできているのを目の当たりにするのはまさに楽しみである。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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