石川鉄工所
■顧客本位に徹し鉄工所がロボットベンチャーに
業種:ロボットの開発・製造
石川鉄工所
下請け体質から脱却して自社製品比率を高めたい、という中小企業が多いのは今も昔も変わらない。だが実際にうまい具合に事が運ぶとは限らないのが現実。成功を収めるのはそう多くはない。こうした中で、石川鉄工所(北九州市)は、鉄工所という下請けから「ロボットベンチャー」と言われるまでに成長したユニークな企業だ。
同社の経営の転機は親会社を取り巻く景気の急変。1935年の創業以来、機械装置の製造販売で業容を拡大してきたのだが、80年代に入ると鉄鋼・造船不況が業界を直撃した。「受注生産から抜け出さないと、経営はいつまでたっても安定しない」(石川清光社長)と、それ以降の経営の大方針がこの時固まった。ここに至るまでの経緯は中小企業の多くが経験することだが、肝心なのはこれから先の実践段階。
通常、企業は不況になれば仕事をいかに確保するかに血眼になる。ところが石川社長は何とかして自社製品を持つベンチャーになりたい、の一心で、受注確保にも増して自社製品につながりそうなテーマ探しに全力を傾けた。そこで化学工場のラボ機器に目をつけ、当時手作業だったラボ内部の作業を自動化する作業に着手、これを成功させた。幸い近くに大手化学会社の事業所が立地しており、化学分析用ミニチュアハンド、分析システムなどを相次ぎ開発。創業以来培ってきた技術を基盤にユーザーの求めることに徹底的に応える経営姿勢を貫いた結果であった。
多くの企業が今「オンリーワン企業」を目標としているが、同社の場合、ユーザーのニーズを理解し、これにあらゆる手を尽くして応え、しかもリスクを超えてチャレンジしていく「ユーザーオリエンテッド企業」と形容していいかもしれない。この経営姿勢とベンチャー志向でその後、ラボオートメーション、曳糸長測定器、下水道管検査ロボットという3つの事業を確立することになる。
ユーザー本位の仕事を貫いていけば製品の中身も多くの企業、自治体が求めるものと重なり合ってくる。同社の製品の中でも例えば下水道管検査ロボットは、ニッチなニーズを取り込んだ代表例。「コストをかけずに当面の劣化診断だけが必要という地方自治体」(石川社長)などの要求に応えた。装置の原型を作った北九州産業学術推進機構(FAIS)と共同でコスト、技術面の壁を乗り越えて実用化に成功、公的助成金も活用した。ユーザーの求めるものを実現させるためには産学官連携にも踏み込み、貪欲に製品化を追求する姿は、まさにベンチャー魂の塊ともいえようか。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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