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2009年の記事

 

 

 

(有)岩井製作所

 

金属の声が聞こえる

業種:シリンダーの旋盤加工
(有)岩井製作所

日本が世界に誇る原子力と新幹線の技術を支えてきた中小企業がある。(有)岩井製作所(東京都大田区)。従業員はたった1名。岩井社長が1人で始めて40年。今日も15年間使い続けている旋盤と作業をともにしている。

独立して間もなく東海村にできる日本初の原子炉の制御シリンダーの話がきた。試作品を懸命に加工したところ合格。同じ大田区でもう一社合格し、50本ずつ担当することになった。制御シリンダーは100本を同時に動かすことができなければ事故にもつながる大事な部分。

一本々々丁寧に加工していった。加工賃が1本2万円のところスウェーデンからの輸入した材料は27万円。余分には輸入されず、失敗は許されない。ある日大地震が来て大きく切削しすぎてしまった!という夢まで見た。神経を研ぎ澄まし加工していった。運命の検査の日。不良は0だった。残り50本を担当している会社は10本不良を出してしまった。社長ではなく従業員に任せた結果だった。特殊な作業、やはり他人に任せられない。おかげで40年間たった一人の会社が続くことになった。以後、日本に存在する原発53基全てに関わった。

原子力の技術力が認められ、次に新幹線の話が来た。新幹線0系は時速 220kmだったのが、300系は時速270kmで走行したいという。ところが三島駅近くのカーブが曲がれない。JRは線路の付け替えではなく、車両の高度化で乗り切りたいとしていた。車両を適度に傾斜させ、遠心力を押さえてしまう。この時に必要な傾斜を調整するシリンダーの依頼であった。

16両編成で70個以上使うシリンダー。外径は削るところが見えるが、内径は見えない。その時は「金属の声を聞く」という。「シャ、シャ、シャ・・」という音がすっと消える。内径が両方向からうまく削れた音。どんなに他の機械の騒音があってはっきり聞こえるという。まさに金属の声。以後、500系からN700系の最新車両まで手がけた。

今後は、技術者育成の活動も考えている岩井社長。「とにかく丁寧にやったんだよ」と笑う。戦後日本を支えた一人に違いない。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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