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(株)JINRIKI

■「緊急避難に役立つ、車いすの"人力車化"装置を世界に」

業種:車いすの改造
(株)JINRIKI


大雨、噴火、地震と自然災害が相次いでおり、防災・減災の大切さは増すばかり。そんな中、車いす利用者の緊急避難に役立つ装置を開発し事業化するベンチャー企業が現れた。JINRIKI(長野県蓑輪町、中村正善社長)で、社名と同じ名の主力製品「JINRIKI」は、車いすを"人力車化"し、車いす単独では無理な坂道も登れるようにするなど、災害発生時の避難を支援する装置。中村社長は「国内はもちろん、海外とくに発展途上国でも普及させたい」と、JINRIKIを世界ブランドにする意気込みだ。

「私が創ったのは、ただの棒です」。中村社長はJINRIKI=棒だと説明する。この棒を車いすに装着すると、車いす牽引バーに早変わりする。人力車やリアカーのように、引っ張って車いすを動かすことで、坂道、段差や、砂利道、雪道、砂浜などの不整地も、女性や子供でも牽引できるようになる。「世界中の人が100年間ずっと押していたのを、引くものに変える」(中村社長)という逆転の発想が、後ろから押す通常の車いすでは考えられない"軽さ"を実現した。

同社誕生のきっかけは東日本大震災にある。当時、会社勤めで、金融機関のシステム開発に携わっていた中村氏は、津波から逃げ遅れる人たちを見て、何かできることはないかと思案を重ねた末、「引っ張る車いす」に思い至る。「弟が障がい者で、子どもの時、弟の車いすを毎日のように押していた。その経験が原点となり、引っ張る車いすのアイデアをずっと温めていた」(同)。震災から1年半近く経った平成24年8月、長年のアイデアを具現化すべく、創業に踏み切る。

平成25年春、使用されている多種多様な車いすの90%以上で装着できるように工夫したJINRIKIを発売する。東南海地震への備えが急がれる太平洋沿岸地域で、特に関心を集めた。各地の防災訓練で、JINRIKIが迅速な避難に役立つことが実証され、三重、愛知、神奈川の各県をはじめ、多くの自治体が導入。学校、障がい者施設、介護施設などでの導入も進んだ。

同社ではハイキング・観光地巡りといった車いす利用者のQOL(生活の質)向上につながる需要も少なくないと見て、旅行代理店、住宅会社、医療・介護会社などと代理店契約を締結。さらに新規パートナーを求めている。「海外20カ国から問い合わせが来ている。とくに発展途上国で役立てたい」(同)と海外展開も見据えている。ただの棒を"孫悟空の如意棒"のようにした同社は、孫悟空が目指した天竺(西遊記に示されている地名で、現在のインド周辺)でも"車いすの如意棒"を広めようとしている。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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