株式会社木村鋳造所
■古来の鋳造技術をデジタル化して道を拓く
業種:鋳物製品製造
株式会社木村鋳造所
金属を溶かして様々な形状の素形材をつくる鋳造は、モノ作りの基盤技術である。原理は不変だが、新手法への技術革新が進み、いまや日本の鋳造技術は世界トップレベルにある。その先導役を果たしてきたのは中小企業だ。この道一筋の株式会社木村鋳造所(静岡県清水町、木村博彦社長)は、古来の技術を進化させてデジタル化し、鋳物製品づくり自体を大改革して鋳造の技術史に衝撃的な1ページを加えた。
同社を有名にした技術はフルモールド鋳造法。基本形は海外から導入したが、欠点を克服し、長所を生かして独自の手法を編み出した。その新手法では発泡スチロール模型の周囲に砂を埋め、溶解した金属を流し込んで鋳物を製造する。一般には形状を決める模型に木型を用いるが、同社は発泡スチロール製模型を使う。模型をガス化させて製品を成形し、手作業だった模型製作を完全デジタル化した点にノウハウがある。これで複雑な形状の鋳物生産を可能にし、多品種少量生産の金型や精密機械向け金型の製造に画期的な改革をもたらした。現在ではすべての鋳物をこの鋳造法でつくり、プレス金型で約45%、精密機械用では同15%という国内トップシェアを占めるほどの力を備えた。
同社の創業は1927年。今年が80周年に当たる。鋳造業界の老舗だが、社歴の前半40年程は一進一退。技術力が追いつかず伸び悩んだ時期もあった。フルモールド鋳造法に出会ったのが1965年。以来、この技術に惹かれ、それまで培ってきた鋳造法を捨て去って、フルモールド鋳造法の専門企業に特化した。修練に修練を重ねた。その到達点の一つがデジタル化である。社内にはNC機やCAD/CAM装置が居並び、鋳物関連工場の代名詞であった3Kイメージを払拭したクリーン工場も実現した。いまでは、鋳物生産を革新したモデル工場として見学者は後を絶たないが、何よりも、あく抜けした老舗企業の技術戦略こそ関心の的だ。
飾り気のない素朴な社名だが、事業活動はキラキラ輝いている。公的機関やマスコミから表彰されることも数多く、経済産業省の「元気なモノ作り中小企業300社」にも取り上げられた。社運を変えたフルモールド鋳造法は「まだ発展途上の技術で、本格的普及はこれから」(木村社長)と明るい見通し。キラ星企業の技術史づくりはさらに続くことになる。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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