門倉メリヤス(株)
■文科系学生との新製品の共同開発
業種:絹ニットメーカー
門倉メリヤス(株)
3年前の春、絹ニットメーカーの門倉メリヤス(株)(群馬県前橋市、従業者数11人)に1本の電話が入った。「大学の授業で仮想企業を立ち上げるのですが、製品開発に協力してもらえないでしょうか。」唐突な話に驚きながらも、門倉重行社長は学生を工場に招いた。彼らは、共愛学園前橋国際大学の情報・経営コースで、兼本雅章准教授のゼミに所属する学生だった。4〜5人のチームごとにインターネット上に仮想企業をつくり、製品を開発して販売するのだという。門倉社長を訪ねてきた学生は、群馬県をアピールする製品をつくろうと、古くからの特産品「絹」に目をつけた。同社は県が発行する冊子から知ったという。
学生の熱心な依頼に動かされた門倉社長は共同開発を受け入れた。自社の工場だけではなく、絹にかかわりの深い富岡製糸場や蚕糸技術センターなどを学生に見学させ、どんな製品ができる可能性があるかを議論した。彼らは次々に面白いアイデアを繰り出してきた。しかし、加工が難しかったり、非常に高価になったりと、製品化の道のりは決して平坦ではなかった。門倉社長は根気良
くやりとりを続けた。
こうした仮想企業「繭美蚕(まゆみさん)」との取り組みは、兼本雅章准教授のゼミ生が代々引き継ぐ形で現在まで続いており、レッグウォーマー、アームカバー、シルクウォッチバンドなど、様々な絹をつかった新製品が工場併設のショップ「セタ・ヴィオレッタ」で販売されている。
もっとも、販売額は少なく原価率も高いため、新製品は必ずしも会社の利益につながっているわけではない。それでも、門倉社長は今後も学生との共同開発を続けたいという。「高価な絹製品はこれまでハイミセス向けが中心だった。学生の若い感性に合った新製品を一緒につくりあげることで、経営者として得たものは大きい」と門倉社長は語る。
産学連携というと、理工系の研究室との技術交流が注目されがちだ。しかし、経営戦略やマーケティングといった文科系分野での大学との連携も、今後、視野に入れてよいのではないだろうか。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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