小原歯車工業株式会社
■安全へのこだわりを自社ブランドで貫く
業種:歯車の製造
小原歯車工業株式会社
多くの中小企業では経営者の高齢化等に伴い事業承継が重要な課題となっている。中小企業の事業承継では、これまで後継者への株式の移転、相続税対策などの財産面の承継が多くとりあげられてきた。一方、経営面の承継に焦点をあてると、事業承継に関するさまざまな課題などを克服しつつ、事業承継を契機に経営革新を実現した企業をみることができる。
小原歯車工業株式会社(埼玉県川口市)は、創業以来の「標準歯車のビジネスモデル」を踏襲しつつ、事業承継を契機に二世代目、三世代目の後継者が経営革新を遂行することによって、その強みを発展させてきた企業である。同社は、現社長の祖父により昭和10年に個人創業、昭和29年には「KHK標準歯車」として製品ラインナップを標準化した歯車の製造販売を開始した。現在のビジネスモデルの原点はこの時期に出来上がっている。
昭和41年には現社長の父が二代目社長に就任、総合カタログの発行、錆が発生しにくい歯車などの新製品の投入、海外展示会への出展などといった販売面での経営革新が行われた。また、ISOの認証取得など、生産体制の見直し、強化が図られるとともに、歯車計算ソフトウェアの販売、電子カタログのリリース、社内ITシステムの整備などのIT化も進められた。平成10年には、二代目社長の弟で現社長の叔父が三代目社長に就任、現社長やその補佐陣に経営経験を積ませ、次の「世代」づくりに尽力した。
平成13年には、創業者から三世代目に当たる現社長が四代目社長に就任した。現社長は標準品だけを生産するのではなく、より顧客のニーズにきめ細かく応える必要性を感じて、社長就任2年目に本社工場の大改修に取り組み、「歯車工房」という名称による標準歯車を顧客の要望に応じて追加工できる生産ラインを構築するなど生産面での経営革新を遂行した。
同族経営は世代を経ると、社内の人間関係が非常に複雑になることから意思決定の透明性や納得性が求められる。このため現社長の体制下では、社内組織体制についてコーポレートガバナンスの強化を進め、組織を重要視した経営を進めている。現社長はオープンで納得性のある組織づくりに取り組むため、積極的な経営方針の提示、データに基づく経営、人事規程の大幅な変更など組織運営体制の見直しを図っている。これらの組織面での経営革新は、一族を含む全ての従業員の意識を変えていこうという考えからの取組みである。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
著作者の承諾を得て掲載しています。無断転載ご遠慮願います。
▲ TOP
2008年の記事に戻る