株式会社木村工業
■地域の歴史が育むモノ作り
業種:高品質アルミ鋳造
株式会社木村工業
楽茶碗で有名な京都・楽家では焼き物の製法を子供にも教えないらしい。子供が親の作業を見ながら技術を修得し、新たな技を作り上げていくのだという。それでいて15代にわたり楽茶碗の基本はきっちりと受け継がれ、代々、新感覚を盛り込んだ作品を造りあげている。京都で育まれ、受け継がれた技術・技能が粘土や釉薬の調合、窯の構築、温度管理などに生きているのだろう。
株式会社木村工業(広島県呉市)は呉という土地が育んだ企業の一つだ。呉は「旧海軍工廠」に象徴されるように、かつては軍事都市であり「戦艦大和」を生んだ造船の街だ。その技術やノウハウは今でも様々な形で伝えられている。同社は昭和43年に木村鐵工所として造船の艤装部品からスタートした戦後生まれの会社であり、海軍工廠も戦艦大和も直接的には縁がない。しかし、呉で育まれた造船技術が同社の中にも流れている。
「モノ作り」は長い時間をかけて技術やノウハウが受け継がれるケースが多い。しかも造船や自動車など基幹産業は裾野が広く、地場産業を形成する。その地域では企業や研究機関などを経由して技術やノウハウが脈々と受け継がれる。同社も戦艦大和を造りあげた「呉」の中で育ち、そこで培われた技術や技能、気質を受け継ぎ、新たなテーマに挑戦しているわけだ。
同社は、ダイカスト並み低コストで製造が可能な高品質アルミ鋳造法「REC製法」を開発した。熱間鍛造に匹敵するもので、この技術は「革新的・環境配慮型アルミニウムの新鋳造システム」として、平成19年度の戦略的基盤技術高度化支援事業に採択された。開発にあたっては、広島大学や広島県立総合技術研究所西部工業技術センターなどの協力を仰いだ。大学や公的研究機関には過去の蓄積が多く残っており、開発に当たっては戦艦大和の製造関連技術が役立ったのではないだろうか。
この鋳造システムは射出機構をなくしたため、装置がコンパクトになったばかりでなく、鋳巣が大幅に抑えられるなどのメリットがある。エンジンブロックやマスターシリンダーなど自動車部品生産には最適であり「品質・コスト・量産の三拍子揃った技術」(木村剛会長)として完成した。同社では「この技術でアルミ成形法の歴史をつくる」と言う。ここから新たな技術やノウハウの伝承がまた始まるはずだ。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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