小出ロール鐵工所
■新規分野参入は既存事業の延長線で
業種:鉄鋼用圧延ロールの研磨加工等
小出ロール鐵工所
「新規分野に参入する。経営を多角化する」と口にする中小企業経営者は多いが、将来の経営を左右するだけに決断までは大変だ。新規事業を検討する場合、自らが持っているマンパワーやノウハウ、資金的な裏付け、外的要因など様々なことを総合的に判断する必要がある。その上で、どのような分野が自社にとって最も相応しいか見極め、準備をしていかねばならないだろう。
創業百年を目前にしている小出ロール鐵工所(東京都墨田区)も新規事業分野への参入を進めている。同社は社名にも表れているように「丸モノ加工のスペシャリスト」として業界内外に認められている。鉄鋼メーカーや製紙メーカー向けロール、電力業界向けのタービンシャフトなどを手がけ、とくに鉄鋼用圧延ロールの研磨加工では右に出る企業がないといわれるほどだ。ただ小出明治社長は「将来を考えるとロールやシャフトだけでは持続的な成長が難しい」と思っている。
新たな事業分野に参入する場合、全く異なった分野に参入することも考えられるが、独自に立ち上げるにしても、関係する企業を買収するにしても、これまで手がけてきた事業の延長線上で新規事業に参入する方が成功するケースが多い。中小企業の場合、ただでさえ不足しているマンパワーや営業力、技術力、資金力などを最大限に活用出来るだけでなく、蓄積されたノウハウを活かすこともできるためだ。
既存事業がベースにあっても、思いつきだけで新事業を立ち上げるわけにはいかない。事前の準備を怠れば命取りになってしまう。小出ロールの場合は、「総合加工メーカーへの脱皮を目指す」(小出社長)ため、早くから準備を進めてきた。新たなスキル修得のため社内環境を整え、社員の技術レベル向上に取り組んだ。「社員に対する投資は惜しまない」(同)というほどの徹底ぶりだ。今では誰もが精密加工できるまでのレベルになっている。スキルが向上した結果「角物」などの加工ができるノウハウも備わった。
平行してマシニングセンターや5面加工機などの生産設備も計画的に導入、総合加工メーカーとなるため、着々と手を打ってきた。加工もロール加工という核の事業に加え「角物」にまで拡大、さらに精密加工ができる体制づくりを進めている。小出社長はステップアップのための次の戦略も頭には入っているようだ。完全に総合加工メーカーとして脱皮した時には、社名からロールがはずれ、創業当時の小出鐵工所に戻るかも知れない。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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