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2010年の記事

 

 

 

(株)河野製作所

■メスを入れるのは身内から

業種:医療用縫合針・縫合糸メーカー
(株)河野製作所

“泣いて馬謖(ばしょく)を斬る”。「三国志」の終盤。蜀を率いた諸葛孔明の信頼を受けていた馬謖であるが、指示に背いて敗戦を招いた。孔明は処刑を決断。他の武将からも有能な馬謖の死をと惜しむ声があがったが、孔明は涙を流しながらも処刑に踏み切った。もしかしたら、企業経営においても、こんな時が来るかも知れない。

(株)河野製作所(千葉県市川市:河野淳一社長)は昭和24年、河野社長の祖父が、個人事業として、時計やスピードメーターなどの針の製造を始めた。昭和39年には、医療用の針の製造も開始した。時は高度成長期で注文もあり、事業仲間3〜4人が生活していくには問題なかった。

河野社長が平成9年、35歳で四代目社長に就任した時には、作れば売れる時代はとっくに終わっていた。しかし、現状は今までの製品を作って、出荷するだけ。「このままでは先がない」と考え、そして決断する。社内に多くいた親族に対し、定年退職として辞めてもらった。本当に苦しかったが、「身内からでないと社員にしめしがつかない」と。しかし、そのことで今までにない発想を持つ社員を採用できるようになり、平均年齢も20歳近く若くなった。

マイクロサージャリー。顕微鏡を使って行う特殊な外科手術だ。手の指先などを切断してしまった場合、足の指から移植手術を行うが、その際に細い血管同士を縫合する必要がある。従来は 0.5ミリ以下の血管は手術ができなかった。生まれ変わった(株)河野製作所は、この分野の扉を開ける。

細い針、細い糸、それを作る機械、糸と針をつかむ道具、専用の顕微鏡。必要なものは限りなくあった。採算など全く考えていなかった。「とにかくやる」これしかなかった。経済産業省の産官学連携プロジェクトも活用し、顕微鏡業界のトップメーカーの三鷹光器(株)と組むこともできた。数年後、ついに0.03ミリの針、0.01ミリの糸を完成させ、併せて、針を作る機械や顕微鏡も製品化させた。0.03ミリの針は世界最小だ。こうして、ついに 0.2ミリの毛細血管までも縫うことができるようになったのだ。

「あのとき、思い切って改革していなかったら、絶対に今はなかった」と河野社長。昨年には「第三回ものづくり日本大賞 内閣総理大臣賞」を受賞、今月には天皇陛下が行幸された。海外の展開などを見据え、新たな挑戦はまだまだ続く。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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