國本工業(株)
■「まずは国内生産拡充から」
業種:パイプ加工部品製造
國本工業(株)
長期化する円高や新興国の現地部品メーカーとの競争激化などにより、国内の自動車関連産業の環境が厳しい中、ある中小自動車部品メーカーが国内生産能力を大幅に増強している。しかも、仕事量が増加して増産が間に合わないため、能力増強の設備投資を行っているという。
主に自動車のパイプ加工部品を製造する國本工業(株)(静岡県浜松市、國本幸孝社長)は、昨年8月、本社工場に続く第二工場となる浜北工場を完成した。受注量に応じて順次増産し、同工場全体が稼働する予定の5年後には3倍程度の年産能力になる見通しだ。
この強気の戦略は同社の持つ革新的な技術と他社をしのぐ経営手法に、その秘密が隠されている。技術面では、独自に特殊なプレス加工でパイプを自在に成形する技術を確立した。この独自技術で、金属パイプの曲げ、拡管、縮管、絞りによる肉寄せ、つぶし加工ができる。従来はベンダーを用いてパイプを曲げたり、溶接して複数部品を接合したり、あるいは鋳造して対応してきた。
だが、これらの方法は部品点数の増加によるコスト高、材料肉厚化、環境負荷の増大といった課題があった。同社の技術は従来技術より軽量で低コスト、短納期に複雑形状の中空部品を一体成形することができる。この技術で生産したパイプ部品が大手自動車メーカーはじめ、複数の自動車関連メーカーから相次いで採用された。
一方では、原価低減の目標値設定と利益率、投資回収にかかる期間などを正確に素早く見通すことができる経営手法を実践する。部品一点ごとにパソコンの表計算を利用して作成された詳細なコストを地道に記録するうちに、「製品を依頼された段階でこれらの見通しがわかるようになった」。
平成21年には「第3回ものづくり日本大賞」で経済産業大臣賞を受賞した。技術革新を土台に、当たり前のことを当たり前にやり続けることで、大手自動車関連メーカーなどからの信頼も勝ち取った。将来は新興国への工場進出も視野に入れるが「安易な海外展開はしない」。まずは国内拠点の仕事を着実に増やすことを重視し、「それには革新を続けるしかない」と腹をくくっている。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
著作者の承諾を得て掲載しています。無断転載ご遠慮願います。
▲ TOP
2012年の記事に戻る