福山物産
■「純玄米黒酢に果実を漬け込む」
業種:「飲む健康酢」製造
福山物産
◆「酢」は古くから日本人に馴染み深い調味料。この酢を仕込むたくさんのかめ壺が並ぶ光景を写真などで見たことがある人は多いはず。これは200年の伝統を持つ鹿児島県霧島市福山町の独特の醸造法で、1年以上もかけて静置・熟成発酵を行う。桜島に抱かれた土地で、南国の太陽に照らされ、アルカリ質の水を得て初めて製造できるかめ壺酢だ。
今、調味料としてだけでなく「飲む健康酢」が静かなブームを呼んでいる。この伝統の地・福山町で福山物産(重久浩社長)は30年近く前、「それまで黒酢しかなかったものを、若年層と女性向けに果実酢を作ったらどうだろう」(重久社長)と果実酢を手掛け始めた。同社は純玄米黒酢の製造部門である「重久醸造」から平成元年に製販分離で設立した販売会社。屋号を「くろず屋」と称する。
まずリンゴに目を付けた。木に生っている生のリンゴを純玄米黒酢に皮ごと漬け込むと、リンゴのほのかな風味と口当たりのよい甘さを醸し出した。木から落ちたリンゴは一切使わない。「多少高価でも本当にいい物がほしい」というお客を対象に作る。コンセプトは「おいしく飲みやすいだけでなく、健康にいいもの」。これを鹿児島空港内のアンテナショップに置くなどの手を打ったところ爆発的に売れ出した。
その後ブルーベリー、ユズ、梅、はちみつ、にんにく、シークヮーサーなどの果実酢を次々に発売、好評を博している。特に「1リットルの業務用を一般の人が買ってくれる」と驚くほど。健康志向という時代の流れにうまく合致している商品群だ。悩みどころは販売ルートづくり。従来のような足で開拓するやり方にも限りがあり、インターネットで紹介できないかと考え始める。
試行錯誤の末、中小機構九州本部の「戦略的CIO育成支援事業」の支援を受け、1年ほどかけて、コンセプトを明確にしたホームページ(HP)を作り上げた。アクセス数も大幅に増えたほか、HPを見た東京の大手出版社から声がかかり今春、レシピの本を出版する運びになった。伝統を足場に、多くの人に受け入れられる商品を開発した同社の経営センスは並みではない。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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