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2012年の記事

 

 

 

(株)マルヨネ

■「伝統の味を守りたい」

業種:車麩(くるまふ)製造
(株)マルヨネ


煮物やお吸い物などに使われる麩(ふ)は日本の伝統的な食材の一つ。麩には製法や形によりいくつかの種類があるが、中心に穴の開いた車輪のような形をした麩が「車麩(くるまふ)」。この車麩の専業メーカーとして明治7年の創業以来、長年にわたり製造を続けている老舗企業が新潟県三条市にある。

(株)マルヨネ(田代徳太郎社長)がそれ。三条市は昔からお寺が多く、そのお寺で用いられていた麩が、庶民にも伝わり生産が盛んになったといわれている。車麩自体は沖縄や金沢などでも生産されているが、「3〜4回巻いて作るのが三条地域の特徴」(田代社長)と製法と味にこだわっているのが元気の源。生産量は新潟県内でトップの位置を占める。

長さ2メートルほどの金属の棒に、手作業で麩の生地を巻き付けて釜で焼き、焼き上がったら、その上からまた生地を巻き付ける。生地は小麦から取り出したタンパク質であるグルテンに、強力粉を加えたもの。同社の4回巻きの車麩は大きいもので1枚が直径95ミリ、厚さ17ミリメートル。肉厚で食感も肉に近いようなところもあり、健康志向のヨーロッパなど海外にも30年以上も前から商社を通じて輸出している。

だが時代の変化とともに同業者が減り市内で車麩を製造するのも数えるほどになった。麩の中でも車麩はまだメジャーとはいえないのが実情だ。マルヨネの5代目として平成23年9月に就任した田代社長は、「車麩は使用用途が広く消費者に知ってもらえば市場が広がる可能性がある」と、20数種類に上るレシピを考案、関西を中心に販路拡大に注力する。

こだわりの製法、用途拡大努力に加え若返りにも取り組む。作業場は焼き釜の熱気で、真冬でも職人は半袖、半ズボン。このため以前は高齢化と人材不足に陥っていたが、募集の際、「製造業」といった一般的な表現ではなく、職場の厳しい暑さと力仕事という実情をはっきりと説明、それでも入社を希望する人を採用することにしたところ、20代、30代の若手が入社し定着率も高まった。

こうした身の丈に合った経営を前向きに続けることで伝統の味を守っている。三条地域の車麩に今後どう関心が寄せられるか注目したい。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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