(株)メトラン
■「小さな命を助けたい」
業種:人工呼吸器の研究開発・製造
(株)メトラン
2,500g未満で生まれる赤ちゃんを低出生体重児(未熟児)と呼んでいる。かつては、赤ちゃんが1,000g未満で生まれた場合(超未熟児)、助かる可能性は極めて低かった。しかし、今では、仮に600gで生まれても、かなりの確率で助かるという。現在、日本の新生児の生存率は99.7%で、世界トップ水準にある。人工呼吸器の研究開発・製造の(株)メトラン(埼玉県川口市:新田一福(にった かずふく)社長)はその一翼を担っている中小企業だ。
通常の人工呼吸器は、圧力をかけて肺の中に酸素を送り込む。ところが、超未熟児の肺胞は、通常の赤ちゃんよりも硬い状態で、圧力をかけると気管支が膨らんでしまうなど、肺や肺周辺部分を傷つけてしまう。(株)メトランの高頻度振動換気(HFO)人工呼吸器は、圧力をかけるのではなく、1分間に900回もの振動を起こし、酸素を肺に送り込んでいる。水に砂糖を入れて、かき混ぜると砂糖が溶け、まんべんなく混ざる。このようなイメージで酸素が肺に届くのだという。
創業は昭和59年。新田社長は、日本に帰化しているが、元はベトナム人だ。日本に留学し化学を学んで、卒業後にベトナムで化学品メーカーを創業する予定でいた。卒業の前年にオイルショックが起き、その影響で化学品メーカーで研修(就職)をすることが難しくなり、医療機器メーカーの研修生となった。その後、ベトナム戦争の激化により帰国できなくなり、やむなく「日本でやるしかない」と、日本で誰も手を付けていないと知った人工呼吸器の開発をたった一人で始めた。
大学を卒業してから長きにわたって医療機関や大学の先生方と一緒になり臨床実験や機器の改良を重ねてきた。この積み重ねが(株)メトランの大きな強みになっている。医学界でようやく認知されたHF0人工呼吸器。現在、日本の9割の新生児集中治療室(NICU)に導入されている。また、肺に優しい振動方式であるため、大人の患者にも応用し展開している。
従業員は35人と少数精鋭。販売は大手企業と提携し、研究開発と製造に特化している。平成21年度には埼玉県の「第5回渋沢栄一ベンチャードリーム賞」大賞を、本年2月には「ものづくり日本大賞」経済産業大臣賞を受賞。今月には天皇陛下が行幸になられた(株)メトラン。「高度な技術を健康維持や健康管理へ応用していきたい」と言う。挑戦は、まだまだ始まったばかりだ。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
著作者の承諾を得て掲載しています。無断転載ご遠慮願います。
▲ TOP
2012年の記事に戻る