株式会社美坂屋
■女子高生の感性に商品化委ねる
業種:バウムクーヘンの生産・販売
株式会社美坂屋
中小企業の経営の醍醐味は大胆さだ。大企業の場合、部門間の壁や、風通しの悪さから、なかなか意表をつく商品戦略が打ち出せなかったり、時間がかかりすぎ商品化のタイミングを逸しがちなのに対し、中小企業はトップの決断で思い切った策を手早く打ち出せる点が強みだ。鹿児島県いちき串木野市に工場を置き、全国に向けユニークなバウムクーヘンを生産・販売している株式会社美坂屋(橋口隆代表取締役)の商品化戦略にその大胆さがよく表れている。
同社はパンも製造しているが、バウムクーヘンは県外に9割出荷、“全国区”で勝負している。屋台骨に育ってきている商品部門で、将来への期待も大きい。顧客のハートをつかもうといろいろな試みを行ってきているが、いま、大都市の若い女性の顧客掘り起こしで思い切った策に出ている。東京の女子高生にリサーチャーになってもらい、何から何まで新種のバウムクーヘン作りを任せている。味だけではない。パッケージのデザインも女子高生の感性を大いに取り入れている。商品が包み込まれているパッケージ次第で売上げが大きく変動するのが若者市場の特徴だからだ。パッケージに書き込む文字も女子高生の感覚を尊重している。文字も若い人の世界では“革命”を起こしている時代だ。ご年配からみればいかがと思う変化が生まれているが、いろいろなヒット商品は文字デザインが急変していることは、また時代だ。美坂屋のこの試みは時代の先端を行くバームクーヘン版だ。本体もこのリサーチの中からホワイトチョコレートというこれまでにない新種のものに結実しようとしている。「ほんとに川下からの戦略です」と橋口社長は目を輝かせる。
同社は大正15年(1926年)創業の老舗だ。かつては県内向けのパンを中心にやってきたが、父親から代変わりして以来、橋口社長は、下請け型から、オリジナルブランド型に転換を図ったほか、天然酵母や屋久島の水を生かして、パンだけでなく、バウムクーヘンに賭けてきている。「6年ほど大企業にいました。こちらを継いだ時は、余りのギャップに落ち込みもしました」と率直に橋口社長。しかし、その後、大企業に無い中小企業経営の強み、醍醐味も味わい、積極経営を推進している。
一方で「経営というもの日々悩みですよ」と謙虚さも持つ。「親が子供に作るような気持ちで商品作りに当たっている」と安全安心な食品作りにも大きな重点を置いている。鹿児島から、全国へ、世界へ、送り出そうと、夢は膨らんでいる。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
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