中道鉄工(株)
■「知的財産の海外流出防ぐ」
業種:回転円盤式の部品供給装置開発
中道鉄工(株)
工場の自動化を表す「FA」(ファクトリー・オートメーション)。国内では、NC(数値制御)工作機械やCAD(コンピューター支援設計)などを組み合わせた自動化が1980年代前半に進んだが、70年代からFA機器の開発に取り組んでいた中小企業が徳島市にある。中道鉄工だ。
代表取締役の中道武雄氏は、大手ベアリングメーカーでFA関連の設計を担当していたが、父親が創業した中道鉄工に70年に入社し、FAの事業化に乗り出した。顧客からの要望を聞き、自動組立機や検査機、省力化機械などを開発・製造し、FAの進展に貢献した。取引先は大企業がほとんどというから、その技術の優秀さが分かる。
ただ、「顧客の要望に応えるだけでは、波が大きい」(中道氏)と、自社製品の開発に乗り出した。その代表例が、工場ラインに部品を供給する装置。この装置はそれまで、振動によって部品の方向をそろえる方式が一般的だったが、
部品同士がぶつかって損傷したり、何より耳栓が必要なほどの騒音を発したりした。「何とかならないか」との要望を聞いて独自に開発したのが「円盤式部品供給整列装置」。円盤型の装置の中で部品を回転させながら、独自のアタッチメントで縦横や上下の部品の方向をそろえる。騒音は大幅に低減し、供給時間も短縮できた。これにより、経済産業省の第1回ものづくり日本大賞で優秀賞などを受賞した。
これに続き開発中なのが、自動車用マフラーの機密容器漏れ検査装置だ。これまでの検査装置は水の中に入れ、漏れた気泡を目視で検査する方式が主流だったが、超音波を使った新方式を開発しており、高精度に、しかも短時間で検査できる。試作機を製作中で、今春には完成予定だ。この装置が軌道に乗れば、「マフラー検査以外の用途も開拓する」という。
中道氏が今、気をもんでいるのが技術流出だ。同社のユーザーは5、6年前までは国内が主流だったが、日本企業の海外生産進展によって「現在では輸出比率が7〜8割に高まり」、独自技術を模倣されるリスクが高まっている。それに対応し、例えば部品供給装置は13件の特許を取得しているが、「特許以外でも中核技術はブラックボックスにしている」という。中小企業にとって知財は経営を左右する重要な要素。中道氏の考えは知財防護の有力な手段となり得る。
著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン
著作者の承諾を得て掲載しています。無断転載ご遠慮願います。
▲ TOP
2015年の記事に戻る